自分の正体-10
美琴はフッと立ち上がり、今度は自分がコーヒーを淹れ戻って来る。
「ハーフちゃんはブラック好きでしょ?砂糖とミルクたっぷりの広徳に合うのかなぁ??そんなお子ちゃまみたいにドバドバ入れて♪」
「…、か、関係ねーし…」
「ンフっ」
「な、何だよ…」
「彼女の為に俺もブラックにする、とかはないんだ。」
「ないね。俺は甘いのが好きなんだよ!」
「変わらないねー、広徳は。物事を柔軟に対処できるくせしてつまんない事には強情なとこ。」
「う、うるさいなぁ…」
と言いながら甘いコーヒーを口にする。
「でもまさかねー、元警視総監の息子さんからハーフちゃんを奪い取るとか…」
「ブッ…!」
その一言にコーヒーを吹き出す広徳。
「し、知らなかったんだよ!それに…」
「ハイハイ、落ち込んでたハーフちゃんを放っておけなくて胸をキュンキュンさせちゃったんだよね、分かってる分かってる♪」
「…一体どこからその情報を掴んだんだよ?ったく…」
「まぁ、公安ですからね、私♪」
「…じゃあ別に紹介する必要ねーじゃん。俺達の事、丸裸なんだろ?」
「どーだろぅ♪」
(絶対みんな知ってるよな…)
「ンフ、私はただ大事な息子が将来を夢見る素敵な人にご挨拶したいだけよ。これからは広徳を宜しくって。」
「ハイハイ、そーですか。でもまぁ母さんが警察官で良かったよ。刑事の女に理解があって。」
「私はむしろハーフちゃんの心配をしてるのよ?こんなプレイボーイでいいんですかって。今手伝ってる任務の中でも、だいぶプレイボーイぶりを発揮してるみたいじゃない?任務の中でどうしても抱かなきゃならない時もある。それを知られたら、浮気大嫌いのハーフちゃん、黙ってないわよ?」
「…もうしない。」
「ホントに?」
「うん。多分…」
「多分…?メイビー?」
「メイビー…。」
「…大丈夫??」
「多分…」
どうやらあまり自信がないようだ。ただ捜査の為に必要なセックスもあると理解している美琴は可能な限り広徳の味方になろうと思っている。その為にマギーとの親交を深めておきたいな、そう思っていた美琴であった。2杯目のコーヒーが飲み干された。