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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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小さな旅-1

 さるお方と「小さな旅」に行ってきました。

 夫に無断で家を空けるにはいろいろ理由を考えなければいけないので泊りがけというわけにはいきません。なので日帰りの旅行です。

 お城めぐりがお好きだというお相手が行き先は決めてくださいました。お相手は奥様に先立たれて今はお一人で暮らしています。独り身のさびしさをときどき紛らわせるためにわたしとお逢いになります。

 奥さまは文学少女でいらっしゃったそうで特に歴史がお好きだったとのこと。お相手は共通の趣味をきっかけに夫婦になられたとのことで、奥さまがお元気なころはお二人であちこちのお城を訪ねたりされていたそうです。

 わたしは不勉強で歴史にはとんと疎いのですが、奥さまに雰囲気が似ているとのことでお付き合いが続いています。

 「雰囲気が似ている…ってどのあたりが似ているのでしょう…?」

 お相手がしきりに『貴女の雰囲気は家内に似ている』とおっしゃっていたのであるとき事を終えてからベッドでそんなことをお尋ねしてしまいました。

 「ああ…すみません。やっぱり気になりますよね…。申し訳ない…」

 わたしは別に気を悪くして詰問したりするつもりではなく、ただ純粋な好奇心からお尋ねしてしまったのでした。『申し訳ない』とお詫びになるお相手に悪いことをしたと思いました。

 「いえ…すみません。そんな謝っていただきたくてお尋ねしたわけではないのです。こちらこそ申し訳ありません…」
 「いや…貴女にはいつもいろいろ気を遣っていただいていて心から感謝しているのです…。それに甘えてしまってついついお声をおかけしてしまって…。ご縁ができたのをいいことに…」

 男性とのご縁がほしくて出会い系サイトにアクセスしているのはわたしもまったく同じです。しかも自分の夫はちゃんと生きているというのに…。

 「おかしなことをお尋ねしてしまってすみません。わたしはわたしですごく心地よい時間を過ごさせていただいておりますので…。『奥さまの雰囲気』がどのようなことなのかを教えていただけたらどうせならわたしもそれに沿うようなこともできないかと思ってしまいまして…。でも奥さまになりかわることができるわけもありませんよね。すみませんでした…」

 お相手との『ご縁』もこれまでかと思いましたが、思いがけずお相手から『小さな旅』のお誘いがありました。

 「いえいえ、とんでもない…。わたしにとって貴女は先立った家内が現世に現れたのだと思っているのです。だからわたしは家内にしてやれなかったことを貴女に…貴女も家内
が本当はわたしとしたかったことをされていると…まあわたしの勝手な思いではあるのですが…そういうつもりで貴女とお付き合いさせていただいているのです…」

 お相手は絵に描いたような紳士でいらっしゃいますが、先ほどまでのわたしとのセックスは…どう言えばいいのでしょうか、情熱的というか野性的というか…。

 「わたしの口から言うのも恥ずかしいのですが、家内はその…いわゆる『良妻賢母』でして。仕事人間だったわたしをひたすら支えてくれていました。わたしの定年が近づいてきた頃『定年になったら一緒にあちこちのお城を訪ねてみたい』と申しておりまして…」

 これから夫婦水入らずでのんびりと…というときに奥さまはひとりで旅立たれてしまったのでした。

 「こんなことは子供たちには決して話せないことなのですが…家内の遺品を整理していたら、その…男のナニを模したオモチャが出てきまして…家内もひとりのオンナだったのだなと…」

 仕事にかまけて妻の心とからだをないがしろにしていたとお相手はご自分を責めていらっしゃいます。

 「絵に描いたような『良妻賢母』の貴女に出逢うことができて…いかに『良妻賢母』であっても女として満たされていなければいけないと…今さらわかったのです…」

 お相手の奥さまと違って、オモチャで満足せずに生身の男性と逢瀬を重ねているわたしが恥ずかしくなりましたが…。

 「なのでわたしは貴女が愛おしい。貴女をその…感じさせることが家内への供養だと思っているのです…。わたしはセックスなどというものは生殖のための行為ぐらいにしか思っていなかった…。でも貴女と出逢ってセックスとは決してそれだけのものではないということに気付いたのです…」
 「それほどのことでも…」

 わたしはそう言うのがせいぜいでした。

 「そんなことに気付く前に家内は逝ってしまった…。でもわたしが貴女と出逢えたのは家内の配剤なのではないかと思ってもいるのです。家内がしたかったセックス…体位であり時間であり回数であり…」

 そのような『深い』考えもなかったわたし…。お相手からの過大な評価にどうしたらいいかわからなくなってしまいます。ただお相手が追慕する奥さまの生き写しとしてわたしをご覧になっていることはわかりました。

 そして比較的近場のお城を一緒に訪ねてみることになりました。お相手によれば数々の工夫が凝らされて難攻不落で名をはせたお城だそうです。わたしはお相手と待ち合わせお城のある街に向かう列車に乗りました。お相手は訪ねるお城にまつわるお話をいろいろ教えてくださいます。一時間ほどで列車を降りました。

 普段暮らしている町から離れたところでもあり夫婦のように腕を取り合って街中を歩いていきました。

 お城に向かう途中にラブホテルも数軒あるような歓楽街がありました。

 「あのホテル、お城みたいですね…」

 結局わたしたちはラブホテルで数時間を過ごしてしまい本物のお城を訪ねる時間はなくなってしまい『小さな旅』は終わったのでした。

 「○○城はやはり難攻不落でしたね…」

 お相手が深く嘆息されています。奥さまも苦笑いされていることでしょう。


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