同士の同志-1
翌日、警視庁から若菜に電話で報告した彩香。取り敢えず優子の素性が特に問題がない事が分かっただけでも収穫だってた。学歴なども特に問題はなく、ごく普通の人生を歩んで来たようだ。昔の西進不動産の爆破も、今回の爆破も、もしかしたら西進不動産に就職してなければ関係する事もなかっただろうし、こうして警察の世話になる事もなかったかも知れない。不運だっただけ…、そう考えた若菜だったが、母親の杏香が隠している何かには物凄く興味があった。
それを掘り下げて調べたかったが、あのまま彩香を愛媛に滞在させ、もしかして何かの事実が漏れる心配ありと判断され、彩香の身に何かがあってはマズい。命を狙われる危険もある。若菜は彩香の身の安全を第一に考え帰京させたのであった。
だが若菜には頭の中にある仮説があった。山田優子、佐川明子、小渕愛子、山口元治、そして高嶋広徳に関する共通の繋がり…、それはマギーにも誰にも話してはいなかった。もしそれが事実なら、恐らく犯人はその事実を掴んだ者の命を狙うだろう。そう考えるとマギーや他の者にそれを話す気にはなれなかった。ただ山田優子らの関係を利用して何をしたいのかまではまだ分からなかった。ただ一つだけ確信がある事、それは山口元治を含めた山田優子らの中に警察の調べているREVOLUTORがいると言う事だ。若菜は密かに何故REVOLUTORが高嶋謙也に『反旗』を翻そうとしているのかを追っていた。我が身に襲いかかるであろう危険さえも顧みずに。
西進不動産で爆発に巻き込まれた時、確信した。あれは自分をも狙った物だと。犯人もきっとある事実に若菜は気付くだろうと判断したのだろう、そんな危険分子をきっと消しに来た、そう直感した。が、この件が片付いたら警察から身を引こうと考えていた若菜は、犯人…、おそらく高嶋謙也の悪事と目的を暴き、絶対に罪を償わせようと決めている為、怯む訳には行かなかった。人から授かった刑事人生を全て注ぎ込み燃え尽きるつもりであった。