同士の同志-8
「では上原さんは優子ちゃんが今回の事件で何らかの関わりがあり、私達に嘘の証言をしてる、と?」
「いや、そうとも言い切れないけど、でもマギーは優子ちゃんの証言は偽りのないもので、事件に巻き込まれた側の人間だと思ってるんでしょ?アンタの感性は鋭いし、善悪見極める目は確かなものだから、マギーが優子はシロだと思うなら、きっと間違いないでしょう。ただ何か引っかかるって言うか、気になるのよね、彼女は。悪女のような事をする傍、弟思いの優しい人間性も見せ、取り調べでは至って素直な性格を見せる…、私から見れば彼女はカメレオン。色んな顔を持つ謎の女ってトコかな。掴みどころがないって言うか、とにかく気になる存在なのよ。」
「上原さんのカンですね?」
「そう。ただ…何て言うんだろ…、彼女の本質が見えないって言うか…何かのオブラートに包まれてるような、釈然としない何かを感じるのよねぇ。」
ずっと近くで若菜を見て来たマギー。そのカンは確かな物であると、これまでその目で見続けて来た。だから優子には何かあると信じられる。ただ若菜が優子を見る目は犯人を見るような類の物ではない事が感じられる。まさに得体の知れない物を見るような目だ。そんな若菜のカンを認める傍ら、マギーの善悪見極める目は確かだと言ってくれた事が物凄く嬉しかった。マギーは絶対この人とこの事件を解決に導くんだと決意を固めた。
すると若菜がフッとマギーに言った。
「ねぇマギー、あなたはイケメンくんの事、どこまで知ってるの?」
急に話題が変わった事に動揺した。
「どこまでって…」
そう言われると、抱きしめられる腕の中にいる心地よさに満たされすぎて、広徳のバックグラウンドまで特に知ろうとしていなかった自分に気付く。
「恋愛はいい事よ?目の前の人に盲目になるのも素敵な事だと思う。でもマギー、好きで好きで仕方がない人だからこそ、その人の事は隅から隅まで知ろうとしないとダメよ?見ちゃいけないと思う事こそ良く見て、どんな事でも愛に変えちゃうぐらいの強さがないと、ね?」
「は、はい…」
その言葉にマギーは、若菜は自分が知らない広徳の事を知っているのではないかと感じた。だが基本、この恋を応援してくれるスタンスに感じた。マギーは珍しく若菜の言う事に従おうと思った。
「まぁ私も盲目になって後先考えず先輩のフィアンセをある意味寝とったようなもんだから、偉そうな事は言えないけどね!アハハ!」
そう言って笑った若菜の顔が妙に印象的だった。
マギーが広徳の事を知ろうと思ったその頃、広徳は自分自身を知る為に動き出した。絡まった糸は解れ始め、そして新たな点と点に結びつこうとしていた。