同士の同志-5
後方にいた車には人が乗っていた。男は広徳の車が去った後、誰かに電話をかけた。
「あ、俺です。ただセックスしただけのようです。車の中で。捜査の話とかしてるような表情ではなかったですね。あの女刑事、息子さんにメロメロですね、ありゃあ。では戻ります。」
「ご苦労。」
男は間も無く走り去って行った。
「刑事が職務中にカーセックスだと?ハハハ!県警本部のエースもただのメスだねー。体動揺、中身もクソエロいとか。俺もヤってみたいモンだわ。でも親子丼ぶりとか嫌だな。ククク。しかしアイツ、女にうつつを抜かしてるようじゃあまだまだだな。だから動きを俺に勘づかれてしまうんだ。我が子の中で1番優秀だと思っていたが、期待ハズレかもな。でもあの女は使えるかもな…。そろそろ言う事を聞かないバカ息子を教育してやんなきゃならないか…。フフッ…」
城南市にある豪邸で1人、風呂上がりのワインを楽しむ男、それは高嶋謙也だった。今、猛烈に身柄を川口に拘束されている佐川明子の行方を追っていた。
「あの小娘…、俺を欺こうとしていただなんて、許される事じゃあない。あの馬鹿ども、まとめて葬り去ってやるわ!替えはいくらでもいるからな。」
笑みの中にも怒りに満ちた目を輝かせていた。
「ったくどいつもコイツも!俺についてくれば巨万の富を得られると言うのに馬鹿な奴らだ。俺が2人いればなぁ…。遺伝はダメだ、コピーじゃないとな。結局頼れるのは自分だけか…。」
謙也は深くため息をついた。
「もう少しで神居島が手に入る。そしたらあいつら、皆殺しだ!」
千城県沖合にある、戦後鉱山資源の発掘で栄えた小さな島もいまでは少ない住人がひっそりと暮らす完全なる孤島だ。謙也その神居島を国から個人的に買い上げようと計画している。誰にもその動きを悟られない為、誰にも計画を口にしていない。ゆくゆくは広徳と組んで計画を勧めるつもりでいたが、謙也は広徳を見限った。
「片山の仕業だな?警察の目立切りと言い奴の差金なのは間違いない。しかしあの一家はしつこい。目障りだな…。まずは調子に乗っている横芝を粉砕してやるわ!」
そう言ってグラスに残るワインを一気に飲み干した。
「しつこいと言えば、上原若菜だな、やっぱ。しつこいと言うか鋭いと言うか、厄介だ。山田優子に目をつけたって事はもしかして勘づいてるかも知れん。少し急ぐか…。上原若菜と広徳共通の弱点…、あの女だ。あの女を使わせて貰おう…ククク!3億円強奪事件のこの俺が勝つか、史上最高の女総監が勝つか、楽しみだな!!」
豪邸に豪快な笑い声が響き渡った。
その頃県警本部に戻ったマギーに
「遅かったじゃーん!イケメン彼氏と車の中でアンアンしてたんじゃないのー!アハハ!」
と揶揄う若菜。
「する訳ないでしょう!?」
と否定するマギー。
(もう嫌っ、その鋭すぎる勘!!お願いだからこの世から消えて!!)
と冷や汗をかいたマギーであった。