《魔王のウツワ・3》-5
「てなわけで次、鬱輪♪」
「あぁ!?」
「歌えや。ヒメかて歌ったんやで、男の自分が歌わんでどないすんねん!」
このバカ…
「ヒメの前で恥晒せ♪」
こうなると七之丞は止められない。だが…
「ああもう、焦れったいわァ!」
パラパラと本を捲り、勝手にコードを入力した。
しばらくして流れてきたのは…
「○’zか!」
「○’zや!」
七之丞の野郎…嫌がらせに歌いにくいものを…
ああ、こうなったら…
「例えばぁ…」
※※※
曲が終わった…
そして、俺も終わった…
真っ白だ…
「ほんまに自分下手やなァ……」
七之丞がマジな顔をして言う。
「…魔王よりジャ○アンの方がええんちゃう?」
やめてくれ…
「なぁヒメ、何かこの音痴魔王に言うたれ」
「えっ…あ、あの…こ、個性的な歌でした…」
この場合の個性的は一番辛い…
「ヒメて、なかなかえげつないなァ…」
「ち、違いますよ!そういうことじゃなくて…鬱輪さんの歌…わ、私は嫌いじゃないです……」
慰められると余計に辛い…特に姫野に言われると辛い…
「なら、お耳直しにわいが一曲♪聞いてください、残酷な…」
※※※
七之丞の本日二回目のアニメソングを最後に、親睦会の名を借りた七之丞の自己満足と辱めは幕を下ろした。
その帰り道…
「ちょいとコンビニ寄ってええか?」
七之丞が言った。
「いいぞ」
「あ、はい…じゃあ、私も…」
コンビニの中にはアルバイトと思しき、男の店員が一人。他に客はいない。
俺と姫野は商品を見て回っている。
「…ゲーム好きなんですか?」
姫野が、ゲーム雑誌を立ち読みしている七之丞に尋ねた。
「好きやで♪最近はオンラインやな」
ゲーム雑誌を閉じると七之丞はオンラインネットゲームについて熱く語り始めた。