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《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

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《魔王のウツワ・3》-4

※※※

軽快な音が周りに流れている。ノワールは一言も鳴くことなく大きめのバッグの中で大人しくしている。このバッグで毎日ノワールを連れて来ているらしい。

そのカラオケ屋の一室。もはや親睦会の名目を忘れた七之丞の一人カラオケ大会が開催されている。

七之丞の歌は上手い。ハスキーな声から、裏声、ビブラートまでをも使い分け、最近のヒットチャートを歌っていた。
まあ…途中で、某双子野球漫画や有名大泥棒三世、巨大機械対使徒などのアニメソングをマジで熱唱していたが……

俺と姫野はと言うと完全に聞く側に回っていた。

「…あのバカ…すまない姫野、つまらんだろ?」
「いえ…そんなことないです。私歌うの苦手ですから、聞いてるだけで楽しいです♪」

姫野は微笑んだ。その口許を見る限り、嘘ではなさそうだ。

「…そうか…」

何か安心した…

「いやぁ、楽しいわァ♪ヒメも歌わんか?もう、残り20分くらいやから一曲くらいどや?」

楽しいのはお前だけだろ。

「えっ…私は…歌苦手で……」
「構へん、構へん♪幾ら音痴やゆーても、そこの魔王よりはマシやろ♪」

…こっちを見るな。

「ほい♪」

七之丞は半ば強引にマイクと本を渡した。姫野は観念したかの様にページを捲り、コードを入力していった。

「あの…笑わないで下さいね…」
「当たり前や♪」

曲が流れ出した。古めかしいフォークギターの音色と共に流れた音楽は、か○や姫の名曲。

「あなたは…」

※※※

「…怖かった」

諸事情により、途中は省略させていただく。
辺りは静まり返っている。

「…あ、あの…」
「…上手いやん」

ポツリと七之丞が感想を漏らした。確かに、姫野の歌は上手かった。小さいながらもよく通った声は澄み渡り、聞く者に抵抗感を与えない。

「なぁ、鬱輪♪」
「ああ、すごかった」

単純な感想しか浮かばない。ただ、上手かった。俺にしてみれば、その辺の三流アイドルよりも上手い様な気がする。

「ほんとですか?」
「ほんま、ほんま♪聞き惚れてまう声やったわ」

姫野は照れくさそうに…だが、嬉しそうにニコリと笑った。歌以上に心に染み込む笑顔だった。


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