【11】中学校女教師35歳の独白-1
『シークレット』昭和XX年9月号「女教師百花繚乱」より。A子(三十五歳)】
皆様、初めまして。わたし、とある中学校で教師をしております。名前を申し上げられないことはお赦しをいただきまして、仮に『A子』とさせていただきます。
はやいもので今年で三十五歳になります。まだ独り身です。いわゆる「ハイミス」、いわゆる「オールドミス」、いわゆる「いかず後家」ということになりましょうか。里の両親や親類は飽きもせず婿探しに躍起になっていますが、わたしは結婚ということには懐疑的なのです。
お節介焼きの伯母には、法事で顔を合わせるたびに、『A子は器量も人並み以上なのにどうしてだ』とか『隣村で先月四十過ぎの女が子供を産んだ。わたしはまだまだ諦めないからね』などとわたしが翻意するのを促してきます。『器量』につきましては、自分で言うのも甚だおこがましい限りですが、伯母の見立てのとおりだろうと思っています。学生の頃にはとある会社のマスコットガールのようなことをしたこともありました。
就職前にも、クラスメイトにかなり熱心に口説かれたこともあり、わたしも相当迷いましたが、結局お断りしました。教職に就いてからもすぐに、同僚の教師から秋波を送られたこともありました。見合いの口を持ってくる親たちを、『いまは家庭に入るよりも、教職にもてる時間を費やしたい』などとあしらったこともありました。
でも、わたしが今日まで結婚しないできた本当の理由は、別なところにありますので、それはこれから申し上げます。
教員に採用されて町場の中学校で三年ほど過ごした後、わたしは〇〇村の中学校に赴任しました。朝に出て列車とバスを何本も乗り継いで夕方に着きました。
夏休みも終わった二学期の頃でした。明日は祝日で学校はお休みということもあり、たまっていた仕事を片付けておりました。少々、手間取ってしまい日の暮れた中を下宿に向かって歩いておりました。家路を急く気持ちから、こっちのほうが近道と、灯もない田畑の間の畦道を選びました。察しのよい方にはこれ以上の説明は不要かと思いますが、要すれば暴漢に襲われて、そのようなこととなりました。
これは全く不意のことでしたが、今となっては、不本意ではありませんでした…というのがわたしの正直な心情です。わたしは、中学生の頃から手淫に耽っておりましたが、そのときに思い浮かべるのは、まさに暴漢に襲われる情景だったからです。日も暮れたというのにわたしに近道を選ばせたのも、心の隅にそのようなことがあったからかもしれません。
わたしは、手拭いで猿轡をかまされて、畑の中に建つ小屋に引き込まれました。小屋は六畳ほどの広さがありました。一角に敷かれている古畳に押し倒されました。暴漢に身体を抱え込まれて運ばれたときに、暴漢が屈強な肉体の持ち主であることを悟っていましたので、わたしはもう観念していました。
(抵抗しませんから!…抵抗しませんから!…)
そう伝えようと思いましたが、猿轡に阻まれて呻き声のようにしかなりません。
「静かにしな! わかってて歩いてたんじゃねえのかよ」
(わかってて歩いてた…そうかもしれない…)
わたしがおとなしくしているのを見て、暴漢は服を脱がし始めました。
「おとなしくしてろよ。おまわりに言うなよ」
わたしは両手で顔を覆ってされるがままになっていました。パンティを引き摺り下ろされると、膝を掴まれて乱暴に股を開かされました。暴漢がベルトを外すガチャガチャという音が聞こえ、わたしは秘所に暴漢のモノを感じました。
「おとなしくしてろよ」
上体を重ねてきた暴漢が耳元、今度はささやくように言いました。そして、次の瞬間にはからだの中に男のモノが侵入してくるのを感じました。想像しては手淫に耽っていた光景とは言え、痛みを伴う初めての感覚にわたしは顔を仰け反らせました。
(痛い!…い、痛い!…)
これも猿轡越しでは暴漢には違って伝わったようでした。
「そうかそうか。欲しかったんだよな。見かけによらず助平なんだな」
暴漢は満足そうに呟いています。
「もっとよくしてやるからな」
暴漢が腰の動きを速めていきます。打ち付ける強さも強くなっていくと暴漢は『ウッ』と一声呻くと動きを止めました。暴漢は思いを遂げたようで身体を離しました。
「おいおい『旗日』は明日だぜ、気が早いな。これで拭きな」
暴漢が猿轡を外します。わたしは手拭いを股間にあてながら、『処女』を喪ったことを思いました。暴漢も血で汚れたのでしょう、ベルトに通していた手拭いで股間を拭っています。
「シたくなったらいつでも来な。相手してやるよ。ああ、でも今度は『月』じゃないときにしようや、先生」
『先生』と聞いて、わたしの身元がこの男に知られていることを悟りました。また来いという暴漢に背いたらどうなるかということが頭を過りました。同時に、また来る言い訳を授けられたようにも思いました。
「先生、吸うかい」
男がふかしていた煙草を向けます。あたかも農作業を終えて休んでいる男女のような雰囲気を感じました。
「いえ…結構です」
煙草は吸えませんし、一応、断りましたが、何となくこの男には『暴漢』だけではないものを感じてたのも事実でした。わたしは、衣服をなおして小屋を後にしました。ブラウスのボタンが二つほど飛んでなくなっていました。
下宿には大家のおばさんがいましたが、お風呂に入っているようでした。何事もなかったようにわたしは自分の部屋に入りました。服は藁くずやほこりで汚れており、おばさんに見られることもなくよかったと思いました。