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マニア雑誌で見つけた素敵な人々
【歴史物 官能小説】

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【11】中学校女教師35歳の独白-3

 男がわたしの中に入ってきます。

 (すりこぎが…)

 わたしの身体に刻まれたあの感覚が甦ります。根元まで埋めた男が囁きます。

 「ああ、やっぱり今日のほうがええな」

 そう言って腰を振り始めます。何度か腰を振るとわたしの割れ目はすぐに潤ってきました。

 「ええ具合やな、先生」

 男が体を起こし、わたしに自分で脚を抱えさせました。両手を畳についた男が腰を強く突き入れました。今まで侵されていなかった奥の奥まで突き入れられました。それからのわたしの記憶は曖昧です。気が付くと男は煙草をふかしているところでした。

 「お、気が付いたかい」

 だらしなく開いたままの脚を慌てて閉じました。脚を閉じると、すりこぎのような異物を挟んだままでいるような違和感がありました。割れ目の辺りがヒリつくような感覚もありました。指でなぞるとぬるっとした感触がありました。男が放った精のようでした。

 「先生も隅に置けないね。だが、今までの男よりもずっとよかったろ」

 (今までの男だなんて…わたし、貴男しか知りません)

 「学校が退ける頃にはもうとっぷりと日も暮れる。次の日を決めておくれよ」

 わたしは、一週間後の日にちを告げました。

 「いい、イキっぷりだったぜ、先生」

 戸を開けるわたしに男が声を掛けました。そのときは意味もよく分かりませんでしたが、後に気を遣ることと分かりました。この男と何度も交わるうちに、意識を失うことなく気を遣るようになったからです。この快感はわたしをこの男との交わりの虜にさせました。男も『ほかの男にはヤらせねえ』と言っていました。

 わたしは様々な性戯も仕込まれていきながら、少なくとも週に一度…ときには二日も三日も続けて、わたしは男との情事…いえ、情事では綺麗過ぎますね。男との小屋でのまぐわいを重ねました。小さな村のことですから、このようなことがいつかは露見するのではないかと怖れてもいました。ところが、そのような気配は何もないまま日は過ぎていき、わたしは男に信頼感のような感情さえ覚えていました。

 夏至の頃など、学校を上がる時間でもまだ日が高いときは、わたしは仕事をつくって残業をするようにしていました。それが仇となりました。わたしは勤務成績が優秀だということで、わたしは学校を管理する部署に異動となったのです。男に跨ってはしたなく腰を振って絶頂に達した後、男に村を去ることを告げましたが、黙って煙草を吸っているだけでした。

 驚いて残念がるものとと思っていた自分を恥じながら声を掛けます。

 「明日もいいですか…」
 「いや、明日はだめだ。もう逢わないほうがいい。…そのかわり、もう一回ヤるぞ」

 はじめてのときのように、乱暴に古畳に押し倒されると、『すりこぎ』を刻み付けるように奥の奥まで突き込まれました。今まででいちばんのまぐわいでした。

 『A子がいちばんだ…』

 わたしの中で果てた男がそうささやきました。初めて名前を呼ばれました。

 いつもと違う男の気配を怪訝に思いながら、その日は小屋を後にしました。二日後に小屋へ続く畦道を通りましたが、男は現れませんでした。結局、男とは逢えないまま、わたしは次の任地へ向かいました。下宿のおばさんに、男の風体を伝えてどこの誰かを訊きたいという思いに駆られましたが、勇気が出ませんでした。

 新しい部署は教員の人事も扱っていました。綴りをめくっていると、わたしと入れ替わりに町場の学校に転勤していった先輩教師は、結婚して苗字が変ったようでしたが、一年とわずかで離婚して退職していました。わたしには、その理由がわかるような気がしました。

 男とまぐわう日々を断たれたわたしは、手淫を覚えたての頃のように、毎日毎晩手淫に耽って性欲を紛らわせるしかありませんでした。村を離れてから三カ月ほど経ったでしょうか。わたしは意を決して村を訪ねることにしました。村にあるつつじの綺麗なお寺を訪ねるという名目まで考えて。朝から強い雨が降っていましたが、わたしは駅に向かいました。

 乗った列車は目的の駅のずっと手前で止まってしまいました。運転再開のめどは立たないとの案内を受けて、仕方なく引き返し家に帰りました。雨は数日間降り続き、村は激しい水害に見舞われたようでした。

 しばらくして、新聞に事件の記事が載りました。記事には先輩教師の名前と顔写真を見つけました。わたしはその記事の小さな顔写真で初めてあの男の氏名と年齢を知りました。『復縁を迫っていた女に切りつけられて重傷を負った』とだけありました。

 (女は三年前まで村の中学校に勤務していた…)

 わたしは心の中で記事の続きを作っていました。

 けがを負ったという男を訪ねる訳にもいかないと思いながら月日が過ぎ、あれから十年が経ってしまいました。法事で酔っ払った伯父がお寺の広間の畳に寝転がっています。赤い顔をして『女盛りをもったいない。三十サセ頃のど真ん中だというに』と口を滑らせて『仏様の前で馬鹿なことを』と伯母に頭を叩かれています。お庭にはつつじの赤い花が咲き誇っています。

 (三十サセ頃か…。あれから随分男にサセてきましたけど『B男さんがいちばん…』です…。もうそろそろ男を漁って品定めするのはやめて、あの村を訪ねてもいいかしら…)

 広間の仏さまは静かに微笑んでいらっしゃいます。


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