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空想と現実の境界線
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空想と現実の境界線-1

夏の猛暑も終わり、涼しいというかちょっと肌寒い季節になった。
そんな寒さも吹き返す熱気、東京。今日も色んな人が街を行き交っている。
そんな東京に一人の青年が居た。

「はぁ…。やることねーな」

加藤拓真。高校2年生。高校入学から普通に、ただなんとなく引きこもりになってしまった。ただ、なんとなく。
ルックスも頭もそんなに悪くはないのだが、一つ普通じゃない趣味を持っていた。

「今日は何を空想でしようか…」

空想。というより妄想、想像。拓真いわく、「空想の中では何をやっても許される。」なのだ。引きこもりになって、食べ物や飲み物を買いにコンビニに行く意外、ずっとこうやって架空の世界に逃げている。

現に昨日はクラスのみんなでカラオケに行って、1番歌が上手い。と女子に褒められた。ということ妄想をした。

夜中歩いていると、女性の悲鳴が聞こえた。急いで声のした場所に行くと、女性とナイフを持っている男が居た。そこで拓真は鮮やかにナイフを持った男を倒し、女性を見事救う。
ということ妄想もあった。

本来の拓真なら筋肉も脂肪も削げ落ちた身体なので、助けようとしても返り討ちに会うだろう。
だが、その現実を全て自分の思い通りに出来るのが空想の世界。すべて自分を中心に世界は廻っている。

「今日は…、久しぶりに学校に行ったら意外に手厚く歓迎され、その後クラスの中で無くてはならない存在になる!…妄想。」

そうして今日も拓真の妄想が始まった。




「ふぅ…今更学校行って大丈夫かな」

半分心配ながらも、恐る恐るドアを開く。
念のため言うが、これは妄想。

「きゃー!!加藤クンだー!」

「おっ?加藤…じゃん!!」

教室に入った瞬間ー沸き起こる歓声と、眼差し。

「あ…、ひ、久しぶり」
「もーぅ、何サボってんの加藤クン♪」

クラス一の美女、唐沢さんが話し掛ける。
何ヶ月も学校に行っていないのを「サボらないでよ♪」で片付けるのは世界中で唐沢さんだけだろう。まぁこれも妄想。都合が良すぎるのが彼の特徴だ。

「サボった…ってちょっと違うけどヨロシク」

こうして妄想学園生活が始まった。


妄想の中の時期は飛び三ヶ月後。
クラスには慣れ、いわゆる地味な人たちのグループに入ることもなく、多少目立った生活をしている設定。

そして今、拓真は唐沢さんに呼び出されていた。
「ねぇ…わ、わたひと付き合っ…て下しゃい!!」
緊張すると舌を噛むのが唐沢さん。
「え…!?ぼ、ぼぼぼ僕で良いんですか!?勿体ないよ」
「わ、わたひは、加藤クンが良いのッ!!」
「じゃあ…よろしくお願いシマス…。」

こうして二人は結ばれた。





と、ここで妄想終了。

幸せの絶頂で妄想を終えるのは、拓真のポリシーなのか。それとも妄想力の限界なのか。

「所詮…妄想妄想。」

こうやって毎日を過ごす拓真なのだ。


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