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空想と現実の境界線
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空想と現実の境界線-2

三ヶ月後。
拓真の様子がおかしい。
コンビニに出掛けることも無くなり、一日中、常に妄想ばかりしている。
前は一日に2〜3回だったのが今では50回以上。
内容も変わった。前までは主に学校生活を妄想していたのが、今では憎い人を殺したり、高級ブランド品を盗んだり、街の中で突如暴れたり、だ。
何がそこまで拓真を変えたのか。

母親の死。

引きこもりの拓真にとって妄想以外では1番近くにいた存在だ。
家族の中で唯一話せる存在。父は厳格で口すら聞いてくれないし、拓真は一人っこである。無理に学校に行かせようともせず、ただただ、拓真を見守ってくれていた母親が、交通事故で死んでしまった。
そのせいで拓真の現実逃避に拍車がかかったのだ。


「ははは…はははは!!」


朝起きるとリビングに食べ物が置いてある。それを食べ、自分の部屋のベッドに戻る。あとは腹が空くまでひたすら妄想。
昨日も妄想で高級ブランド100点以上盗んだところだ。


「っくくく…ははははは!!」



ベッドの隣のテレビでは、朝方のニュースがやっていた。

『一昨日、ストーカーを繰り返していた男性が、女子を切り殺す事件がありました。被害者は、唐沢しずく、17歳。男性はずっと被害者と付き合っていると思い込んでいたらしく、自分の物にしたい一心で殺害に至った。という仮説が最有力かと思われます。容疑者は加藤拓真。見掛けたら下記の電話番号までご連絡を。犯人逮捕にご協力をお願いします。』

『次のニュースです。原宿の高級ブランド店、『Crown.』で、カルティエやグッチ、ロレックスなどブランド品が多数盗まれる事件がありました。犯人は不明。目撃者によると高校生くらいの身長で痩せ型。だそうです。心当たりのある方は御一報を。』

ニュースが終えると同時に、部屋のドアが勢いよく開いた。

「加藤拓真!殺人容疑、窃盗容疑で逮捕する!!」

拓真は、空想と現実が分からなくなっていた。
どこまでが空想で、
どこまでが現実か。

きっと妄想でやっていると思い込みながらも、実際に行動を起こしていたのだろう。

連行されていく拓真は、うっすら笑みを浮かべていた。拓真はこう思っているのだろう。この逮捕劇も空想なのだと。

空想と現実の境界線を失ってしまった拓真に、新たな境界線が出来るその日まで、拓真の妄想は続く。いつも、いつまでも。



END


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