真実の唄-2
呼び止められ、振り返りこちらに戻ってくる大学生。
車の前で話す彼氏とその友達。
あの人いいな。
直感だった。
体中に電流が走ったみたいに何かがビビっときた。訳も分からず『この人だ!』と思った瞬間だった。
背が高く、少し茶色い短髪。
すらっとした指。
すっと細い目。
Tシャツにジーンズのラフな格好。
真夏の空の下、彼の額に滲む汗。
エアコンのきいた車の中にいる私。でも、何だか頬が火照っていた。
「ごめん、お待たせ」
「ううん」
再び車は走り出す。
隣にいるのは祐一。
なのに私の頭の中には…
「ねぇ、さっきの人何て人?」
「ん?あぁ、大輝?藤真大輝」
「サークル仲間?」
「そう。普段学科も一緒なんだけどね」
「ふーん、そう」
あまり聞くと祐一に不快感を与えてしまうと思ったから、それ以上は詮索しなかった。
藤真 大輝(フジマ ダイキ)
それが彼の名前。
聞きたいことはいっぱいあった。でも分かったのはその名前だけ。
たったあの一瞬。
エアコンと音楽で、彼の声さえも聞こえなかった。どんな雰囲気で話すのかさえも分からなかった。
なのに……
フロントガラス越しの彼に私は一目惚れしてしまったのだ。