非情な実験-8
ファニータに助けの手を差し伸べることが出来ぬのなら、せめて最後まで見届けよう。彼女がどんなに屈辱的な目に合わされるのだとしてもだ。自分もこのまま無事ではいられないだろう。どのような目に遭わされるか分からない身だ。マレーナは自身の覚悟を決めるため、窓からの光景を目に焼き付けるつもりだった。
ドワモ・オーグはファニータの秘部に顔を近付け、フンフンと鼻を鳴らしながら匂いを嗅いだ。そして舌を出すと、陰部全体を舐め回し、膣口から滴る愛液を味わうかのように啜り上げた。
「くっ……ああっ……!」
ザラ付いた舌の感触が、彼女に快感を与える。必死でそれに堪えるファニータ。しかし、彼女の忍耐もそう長くは続かなかった。
ドワモ・オーグは長い舌先を、彼女の肛門に差し入れて奥まで侵入させた。ザラザラしたその舌先を直腸内で蠢かす。
「んあっ! ああっ!」
男性経験のないファニータも、男女の性の営みについての知識はあった。前戯についても然りである。だが、その中にこのような方法はなかった。彼女は完全に不意を突かれた形になった。
更にドワモ・オーグは指先を膣粘膜に差し込む。尖った爪の先が狭い入り口をゆっくりと広げて行く。痛みと同時にそれ以上の快感がファニータを襲った。
「はあんっ! ああん!」
彼女はとうとう喘ぎを、女の悦びの声を上げてしまった。処女粘膜を押し広げたドワモ・オーグの指は更に奥へ侵入する。肛門に差し入れられた舌と合わせ、彼女の膣は外側と内側の両方から刺激を受けてした。
「あっ! あっ、あっ、んんっ、んんんっ! あんっ、あんっ」
スピーカー越しに隣室からの嬌声が鳴り響く。マレーナは思わず目を閉じた。ついさっき最後まで見届けようと決心したはずなのに。ファニータが、恐らく主の自分には絶対に見せたくないであろう姿を、直視することが出来なかった。
「ふん、主の目の前で淫らな声を上げるとは、けしからん侍女だ」
そんなマレーナの姿に目をやりながら、オズベリヒは悪態を吐く。もちろん、全て自分が仕向けたことを知った上である。
「はあ、はあ、はあ」
ファニータの喘ぎが、荒い息遣いに変わった。隣室の二人は再び目を向けた。彼女の秘部は、自らの愛液とドワモ・オーグの唾液でぐっしょりと濡れそぼり、充血しきった膣口からは、ほんのり白濁した粘り気の高い蜜が、糸を引きながら滴り落ちていた。
ドワモ・オーグはファニータの背中に手を回すと、彼女の上半身を引き起こした。彼自身、力加減が分からないのか、多少強引ではあったが、敵に対する威嚇や攻撃とは全く別のようだ。
ファニータはベッドの端に座る格好になった。前に立つドワモ・オーグの雄。彼女の目線の先、やや下にはドワモ・オーグの股間がある。嫌が上にも彼女の目に雄の生殖器が入った。それはすっかり屹立して、先端が上を向いていた。その体格から、相当な太さと長さを有するかと思いきや、太さはそれほどでもない。人間の男性器と比べても、やや太いといったレベルである。だが、長さは人間の比ではない。倍近い長さがある。そして何より、人間の物と違うのはその形状である。先端が細く、螺旋状の表皮に包まれているそれは、まるでドリルのような形状だ。そして更に驚異的なのは、その陰茎の下にぶら下がる陰嚢、精巣の大きさだ。通常は下半身を覆う毛足の長い体毛で隠されているそれは、人間の成人男性とも比べ物にならないほどの大きさを有していた。
「あ……」
男性経験もなく、人間の男性器ですら簡略化された図解でしか目にしたことのない十七歳の少女にとっては、この世の物とは到底思えなかった。
この獣は次に自分に何をしようと言うのか。ファニータは恐る恐る、怯える目を彼に向ける。すると、ドワモ・オーグは彼女の後頭部に手をやると、その顔を自分の股間に近付けさせた。ファニータの目の前に彼のペニスが迫る。そのまま彼女の口元を、それに触れさせた。生臭い獣の匂いが鼻孔を突く。そうか――ファニータは思い当たる。この獣は口淫――フェラチオを望んでいるのだ。彼女は当然、実際に行ったことはなかったが、男女の営みにおいて、『そういう行為』をすることは知っていた。
逆らってはいけない。怒らせてはいけない。さもなければ、自分は一瞬で殺されてしまうだろう。そんな恐怖には逆らえなかった。ファニータは彼の腰に両手を添えて自分の身体を支えながら口を開き、舌を出して目の前のそれに這わせた。頭の上に荒い息が吹き掛かる。
どうすれば彼は喜ぶのだろう――ファニータには全く分からなかった。種族の違う者同士の交わりである。当然のことだ。だが、彼の気分を損ねる訳にはいかない。彼女は懸命に、ドワモ・オーグのペニスに刺激を与えた。周囲を上下に舐め、口に含む。次第に、先端からジワリと粘液が滲み出てきた。ファニータは口内に溜まった唾液を口唇の端から滴らせながら、獣への愛撫を続けた。徐々にそれは、大きさを増して行った。
口淫に満足したのか、ドワモ・オーグはファニータの後頭部の手を離し、彼女を自由にした。
「かはっ! ごほっ!」
ペニスから口を離したとたんにむせ返るファニータ。少しでもいいからこのまま休ませて欲しいと思った彼女だが、ドワモ・オーグはそれを許さなかった。
彼はファニータの腕を取って引いた。彼女はベッドから降りて彼の前に立つ格好となった。二人の、いやひとりと一匹の並ぶ姿は、まるで小柄な子供と体格のいい大人だった。ドワモ・オーグはファニータの両肩に手を添え、反対側を向かせた。彼女はドワモ・オーグに背中を向ける格好になった。そしてすぐさま、彼女の背中を押して屈ませる。ファニータは目の前にあるベッドに両手を付いた。