《魔王のウツワ・2》-5
「ゲホッ…はぁ…はぁ…さ、さらって来たんやないんか?」
「当たり前だ」
回復した七之丞は立ち上がり、姫野をジロジロと眺めた。
「へぇ〜、可愛らしい娘やん♪わいは神足七之丞。自分は?」
「えっ…あの…姫野澪です…」
「…ヒメノのヒメはお姫様の姫?」
「…は、はい…」
そう言うとしばらく、俺と姫野の顔を交互に見た。
「魔王と姫……プッ!」
突然、七之丞は噴き出し、そして…
「だあ〜はっはっはははははは♪」
突然の大爆笑…
地面に膝を付け、どんどんと握り拳を叩き付けた。
「あ〜っはっはは♪…やっぱ自分、さらって来たんやないかい♪何や、魔王に捕まった姫かいな!これで勇者来たら完璧やぞ!」
そんなに笑うことだろうか?
見れば、姫野も反応に困っている。
「そこのバカは無視していいからな」
「えっ…あっ…はい…」
未だ、七之丞は…
「傑作やぁ〜♪だあ〜ははは…はぁ…腹イタ…」
と一人で大爆笑の渦に巻き込まれている。
「ウゥー!」
一方、ノワールは全身の毛を逆立て、その金色の細い瞳孔に殺気を漲らせて、七之丞を睨んでいる。
「…ほら、飲め」
牛乳を差し出すとノワールは渋々ながら、口をつけ始めた。
「悪いな…」
バカを一瞥。向き直って姫野に謝る。
「いえ…大丈夫です」
「ああ、笑ろたわぁ…♪おもろいなァ、自分等♪なぁ、わいも明日から此所で飯食ってええ?」
「えっ…あっ…わ、私はいいですけど……」
姫野はこちらをチラッと見ている。
「…ダメと言っても来るんだろう…」
「さっすが!我が親友♪いやぁ、魔王様は寛大やなァ♪」
はぁ…煩くなる…
ニヤニヤと笑う七之丞を見て、明日からが少々不安になってきた…
続く…