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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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島唄-5


 しのちゃんの、ほんとうに久しぶりに聞くしのちゃんらしい高い声が店内のスピーカーから流れる島唄にかぶさって響く。カウンターの向こうでさおりさんと元オーナーさんが笑顔になる。
 しのちゃんと争うようにしてさおりさんのおもてなしをいただく。片っぱしからなにもかもがとにかくうまい。こんなでかい海老は今までお目にかかったことがないし、カルパッチョのタコの弾力といったらない。イラブチャーって初めて食ったけれどおもしろい食感でなかなかうまいぞこれ。そして、さおりさん手作りの特製ドレッシングがしのちゃんの手によってふんだんにかけられたシーザーサラダだって、ひと口食うたんびにしのちゃんがドヤ顔で俺を見るんだから、そりゃもう最高にうまいと言うしかない。
 なんだかんだ言ってペロリと平らげた。長旅で空腹だったってのもあるけど、やっぱりしのちゃんに会えて、しのちゃんがいつものしのちゃんに戻ってくれて、心の緊張感が取れてほっとしたからってのが大きいんだろう。
 とはいえテーブルの様子を見た元オーナーさんからリブロースステーキを勧められたのはさすがに遠慮しようとした。入り切るかどうか不安だったから、なんだけど、

「あたし食べるもーん!」

と高らかに宣言したしのちゃんのご意向で見事なミディアムレアのリブロースステーキが250グラム、じゅうじゅうとすざましく食欲を再喚起させるシズル音を立てながらテーブルに運ばれてくる結果になった。自分に200グラム、俺に50グラム切り分けてにへー、と笑ったしのちゃんも、俺が会いに来たこと、俺の気持ちやしのちゃんへの接し方が変わらないことに安心してくれたんだろう、食べきれずに結局150グラムくらいこっちに回してきたけど。俺もなんだかんだ言って付け合せのグリーンも含め完食したけど。げっぷ。

「こっちの学校、もう慣れた?」

 デザートのブルーシールアイスを食べながらしのちゃんはおっきくうなずき、チョコレートアイスがついていることも気にせず唇を開き、

「うん、慣れたよ。今度の学校、すぐにいっぱいお友達ができた。キャビンあたんだんさんの柚希ちゃんがお姉ちゃんの真奈ちゃんが、いっぱいお友達紹介してくれたんだよ」

と、相変わらずアテンダントで舌が回らず俺を萌死にしそうなさせてくれる。まあ順調な様子はテレビ通話やさおりさんとのやり取りで聞いていたけれど、しのちゃんの生声で直接聞くと今しのちゃんがとても幸せな環境にいることを強く実感させられる。
 その幸せな環境に俺がもう一度「こいびと」として戻りたい。そう決意して起こした行動の結果に俺も満ち足りていた。こうしてしのちゃんが、俺に以前のように甘えてくれて、俺に以前のようにやさしくしてくれて、そして「こいびと」の笑顔を見せてくれる。これ以上何かを望んだらバチが当たる。
 ふと、店内に流れていた有線の島唄がフェードアウトした。店の中央、通路が丸く広くなっているあたりに三線を抱えた元オーナーさんが立った。さおりさんがA5サイズのプリントを観光客の小グループのテーブルそして俺としのちゃんのテーブルに配る。

「今夜は、ようこそお越しくださいました。宮古島の旅、楽しんでらっしゃいますか?」

 強い琉球訛りで、でもやさしい口調で元オーナーさんが語りかける。小グループから、サイコーです、と声と拍手が上がる。

「たんでぃがーたんでぃ(ありがとう)、私も、旅のお客様をこうしておもてなしすることができること、とってもうれしいです。今日はね、大切な皆さまに、僭越ながら私の大好きな宮古島の古い歌、お届けできたらと思います」

 さおりさんが配ったプリントには、歌詞が印刷されている。俺は、しのちゃんが座っている側の席に移り、しのちゃんと並んでプリントを見ながら元オーナーさんの歌声を聞いた。ちょっとハスキーで、でも包み込むような歌声。

― さーヨイ
  伊良部トウガマーン
  間小んなヨ
  離りゆとが
  ばしがまんなーヨーイ
  渡ず瀬ぬマーン
  休ず瀬ぬ
  あていぁなむぬヨー

 (伊良部島との間には 
  離れ島との間には
  渡る瀬が 休む瀬が あればいいのに) ―

「これね、伊良部島に住んでいる女の子が、宮古島にいる男の子、たぶん彼氏ね、その子に向かって歌っているの。伊良部島との間には海しかないから、島と島の間に人が通れる浅瀬や休む場所があったらいいのに、って『こいびと』のことを気遣って歌う歌なのね」

 テーブルの横に来たさおりさんがそう教えてくれる。三線の穏やかな響きが、俺に身体を預けるようにもたれかかっているしのちゃんと俺をやわらかく包み込む。観光客の小グループが合わせる手拍子が心地よい。
 俺は、しのちゃんの右手をそっと握った。しのちゃんが同じ強さで握り返してくる。「こいびと」の島唄。まだ小学3年生のしのちゃんがその情緒をどこまで理解しているかはわからない。けれど、俺の胸にもたれるしのちゃんは、人が確実に自分を愛してくれる存在がそばにいるときだけに見せる穏やかで満ち足りた表情をしていた。



 お店のすぐ近くにあるさおりさんが借りている家は独立したタウンハウスのようなつくりで、1階部分の2LDKをさおりさんとしのちゃんが賃借し、それと2階部分の1LDKで構成されている。2階部分には先月まで単身赴任の銀行員が住んでいていまは空き室になっているらしい。


「だからお兄ちゃんがこっちに引っ越してくるまで誰も住まないで、ってしのと祈ってるの」


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