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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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島唄-3


「えーストーカーみたい」

 さおりさんがおおげさに眉をひそめ、それから破顔した。

「うそうそ、やっぱり二人っきりにしてあげないとね。家の鍵、しののランドセルにぶら下げてあるよ」

 意味深なさおりさんのウインクに、今度は臍のあたりまで赤面が広がった。



 店の裏口は細い路地になっていて、左に出ると海岸沿いの道路にぶつかる。そこからまっすぐに伸びる道の先に小学校が、反対側の左カーブしている道をゆけばさおりさんとしのちゃんが住む家がある、とさおりさんから教わった。
 道の海岸側に渡り、低い防波堤のような形になっている歩道に立つ。俺が住んでいる地方から遥か西のこの島は、俺の退勤時間を過ぎてもまだ陽射しが明るい。西の空の夕焼けを半ば背にするようにして小学校の方を見ると、ぽつぽつと立ち並ぶアパートや一軒家の向こうに小ぢんまりとした白い校舎が見えた。あれが、しのちゃんが通っている小学校か。
 やわらかな海風を受けながら防波堤の上にしゃがむ。潮の香りが鼻先をくすぐる。ここが南の島だという実感があらためて沸き起こる。俺が住む町から飛行機で数時間、海を隔てた距離のこの島で、しのちゃんは小学3年生になり、さおりさんとの新生活を楽しんでいる。そこに、俺というピースが嵌まる余地はまだ残っているんだろうか。
 交通量の少ない車道をなかなかにクラシックなダットサントラックがのんびりと走っていく。その「DATSUN」と赤で書かれた後アオリを目で追う。ダットラが右ウインカーを焚いて交差点をゆっくり曲がっていく。トラックが交差点から路地に入ると、死角になっていた横断歩道が視界に入る。その上を、小学生くらいの女の子が二人、なにかを話しながら渡っている。手前にいるマリンブルーのキュロットスカートを履いた女の子が背負っているランドセルはミントグリーン。
 しのちゃんだ。
 横断歩道を渡りきった二人は、堤防に上がってそこで立ち止まった。しのちゃんがミントグリーンのランドセルの背中をこちらに見せて立ち、ピンクのポロシャツを着た髪の長いしのちゃんと同じくらいの年格好の子となにか話している。あれが柚希ちゃんの妹の真奈ちゃんかな、と一瞬思ったけれど、髪の長さもかすかに見て取れる表情も真奈ちゃんとは違うようだ。二人が同時に上を向いたとき、きゃははー、という、あのしのちゃんの笑い声が風に乗って俺の耳朶に届いた。
 胸が、ツン、とする。しのちゃん。俺の「こいびと」のしのちゃん。遠距離恋愛になってしまって、俺の身勝手と不注意で寂しい思いをさせた、もうすぐやっと9歳になる「こいびと」のしのちゃん。俺が、もうなにもかも失ったとしてもかまわない、もし支店長が有給を認めてくれなかったら会社を辞めてでもここへ飛んでこようと決意したほど、俺にとってなによりも誰よりも大切なしのちゃん。
 二人が手を振り合い、ピンクのポロシャツの子が振り向いてランドセルをこちらに見せて歩いていく。三歩歩いて振り向いてまたしのちゃんに手を振る。しのちゃんの「ばいばーい」という声が聞こえた。懐かしさすら感じるしのちゃんの声。そのしのちゃんが、こちらを向いて歩き始めた。遠目にもわかる弾む笑顔。やっぱり三歩歩いて振り返り、ばいばーい、とまたピンクのポロシャツの子と手を触り合う。その、しのちゃんの仕草ひとつひとつがたまらなく愛おしい。
 再び歩き始めたしのちゃんが、堤防に立っている人影に気がつく。その表情が、笑顔からなにか不思議なものを見るようなものに変わる。同時に、しのちゃんのキュロットスカートからすらりと伸びる足が止まる。
 堤防の上で、三十メートルくらいの間を空けて向かい合う俺としのちゃんを、海からの西風がやさしく包む。しのちゃんの顔右半分を西陽が穏やかに照らす。

「しのちゃん、俺だよ」

 いろんな思いを込めてこぼれた言葉は、自分でも意外なほどやわらかくそれでいてくっきりしていた。

「しのちゃんに会いたくて来たんだ」

 立ちつくすしのちゃんが、表情を変えないまま軽く顎を引く。


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