奈岐と亮の仲直り-1
奈岐は、啓介と性の喜びを共にしたかったのだ。生きているという実感を啓介と一緒になって心から味わいたかった。啓介の男根を求めたのはその証しだった。奈岐はそうとはっきりわかっていたわけでなかったが、がっかりとした気持ちが重く眠れない夜は長かった。
奈岐は、亮のことを考えていた。やはり亮の求めを受け入れたいという気持ちが本当かもしれない。女は肌と肌を求め合い、合わさる性器と性器のまぐわいにこそ生きる意味を確かめる生き物なのだという実感が奈岐にもわかった気がして来ていた。だからこそ、亮の求めを受け入れたいと思いつつ、心の奥では啓介のモノを求めていることに今なおこだわっていたと思う。そしていつになく熱くなって逝った後に求めたのは啓介の男根だった。そこには奈岐が望んで已まない男の精子があった。
「啓介の精子がわたしほしいの、子どもができたってかまわない、いや啓介の子どもが欲しい、わたしの中に思い切り注ぎ込んでほしい」
そういう奈岐の、女としての生きる意味は、啓介に否定され続けてきた。積もり積もってしまっていた。
亮は、仕事が立て続いていた。次の日には奈岐へメールを返そう、と思っていたのがいつの間にか、四日が過ぎていた。
奈岐は、亮の返信がないのを気にしていながらも、啓介とのことで亮への気持ちに油を注がれたようになっていた。自分の心に素直になって亮へ気持ちを伝えよう、それで相手が受け入れてくれなければしょうがない。
奈岐は、亮がホントに体調でも悪くしているのはないかという気もしていた。そうだとしたら、心だけでも癒してあげたい。いずれにしてももう一度メールを出してみる価値はある。
「りょうさん
なぎです。
りょうさん、体調とか大丈夫?
身体を悪くしてない?ちょっと心配しています。
りょうさん、この間は強い言葉を使ってしまってごめんね。
わたし、ホントにりょうさんのこと好きだよ。
りょうさんが気を悪くしてないか、すごく気になってます。
きっとまた近々、二人で楽しい時間を過ごせると
思っています。
連絡を待ってますね。 」
奈岐は恋する女が思い詰めるところまで思い詰めていた。
亮は、返信する前に奈岐から再度メールが来たことに深夜帰宅して気付いた。そこには奈岐の思いがにじみ出ていた。嬉しかった、やはり亮は奈岐のことを愛していた。こんなにもわかり合える女性はやはり奈岐しかいない。
「なぎちゃん
りょうさんです。
メールをたくさんくれてありがとう。
感謝です。
体調は大丈夫です。
ただ仕事が忙しくって返信が遅れました。ごめんね。
この間の件は気にしてないよ。
また、チャットで愛し合いましょう。
いつものように週末の時間で大丈夫でしょうか?
楽しみにしています。 」
亮は、良かったと思った。安心して奈岐の既読を確認する前に眠っていた。
奈岐も安心していた。週末に向けていつもよりワクワクとして気持ちが高鳴った。そして楽しく過ごしたいと心から思っていた。