いつか大きな花に成れ-6
そして翌朝。
わたしはスミレが気に成り、一番で出社すると、急ぎ足でオフィスに飛び込み、部屋の隅にある大きな観葉植物の鉢を見据えました。
そして鉢植えを見るなり、目を見開いたまま、固まっていました。
「ねっ! だから言ったでしょ、大変な事に成ってるってっ」
優子です。
優子はわたしの肩に腕を乗せながら、固まって動かないわたしの耳元でそう囁きました。
見れば、わたしが『スミレ』だとばかり思っていた小さな花の苗は、いつしか黄色い、まるで太陽の様な大きな花を咲かせて、あたかもわたしに微笑みかけてくれているかの様ですら、あります。
「あのちっぽけな鉢植えが、まさか『ひまわり』だったとはね」
優子はそう言って、笑っていました。
”その内、でっかい花でも咲くんだろう! 嫌なこと全部忘れちゃうぐらいの、でぇーーかい花がさっ! ”
わたしは以前、わたしの好きだった人が言っていた言葉を思い出しました。
「アハ…… アハハハ……」
わたしは思わず、笑います。
そして、なんだか胸の中をくすぐられたような気分で、嬉しくもあり…… 寂しくもあり……
そしてまた、涙が溢れました。