狂宴-15
「間違っている事は分かっています。今回お金を払っても相手はまたお金をせびってくるかもしれない。でも加奈のことを考えると、他にどうしようも・・・」
俯きながら言いかけたところで鈴香は隣に座って話を聞いていた夜雲の様子がおかしいことに気がついた。ブツブツと1人で何かを呟いており、その表情はいつもよりも曇っている様にも見える。
「あの、・・・夜雲さん?」
声をかける鈴香を無視して夜雲はおもむろに自分の鞄からノートパソコンを取り出しカタカタと操作し始めた。しばらく画面を見ていると、何やら履歴書の様なものが表示された。
「ねぇ鈴香ちゃん。その妹さんを襲ったカズヤって、この男じゃないかしら?」
画面には男の顔写真と研究記録と書かれた難しい単語がズラリと箇条書きで記載されていた。名前の欄には戸塚一也と書かれている。
「ええ、名前はあっています。加奈が名刺を貰ってましたから。でも動画には顔は映らない様になってましたから、この人かどうかは・・・」
鈴香は言葉を続けながらも、彼女がなぜその男のデータを持っているのか、と素朴な疑問を感じていた。
何か気になることでも、そう尋ねようとした鈴香よりも先に夜雲が口を開いた。
「鈴香ちゃん、この件私に任せてもらえるかしら?大丈夫、妹さんにとっても、鈴香ちゃんにとっても悪い様にはならないから」
それから時は流れ・・・