狂宴-14
しばらくこのままジッとするしかないと思った鈴香に、
「あら、目が覚めた?」
このフロアの男女の中で唯一起きていた夜雲が鈴香の目が覚めたことに気がつくと、周りを起こさない様にソッと鈴香の耳元まで近づき、
「ねぇ、鈴香ちゃん。今日の事だけど、もしかして妹さんが何か関わってるんじゃないかしら?」
夜雲の囁きに体が動かずともビクッと表情を曇らせる鈴香。その様子を見て、
「やっぱり当たりみたいね。変だと思ったのよ。鈴香ちゃんはそんなにお金に執着する性格じゃないのに急に欲しがるなんて。おそらく身近な人に何か金銭トラブルがあって、それで今回の第3部に参加したんじゃないかって私なりに考えたのよ」
流石に鋭い予想だった。おそらく夜雲は心当たりのある人物として身近な妹に適当に当たりをつけた様なのだが、結果として大当たりであった。
「ねぇ、何が起こったのか話してもらえないかしら?ひょっとしたら何か力になれるかもしれないし。それにクラブの女の子の悩み相談も私の仕事の1つなんだから」
夜雲の言葉に嘘偽りはない。もしかしたら本当に力になってくれるかもしれない。事情が事情だけに両親など誰にも相談出来なかった鈴香にとってこれほど頼もしい人物はいなかった。
「わかりました、全部お話しします」
「・・・それで話は終わりです。あとは夜雲さんの推察通り、そのお金を稼ぐために今回参加しました」
シャワーを浴びて一息ついた後、控え室でソファに座りながら鈴香は妹の加奈に起こったことを話していた。時刻は既に深夜を回っている。事前に勉強のために友人宅に泊まるかもしれないと伝えておいたとはいえ、今頃母親は家でカンカンだろう。
女性陣と客達は目が覚めた順番でタクシーを手配し、全員既に帰宅している。その為、このクラブに残っているのは鈴香と夜雲の2人だけであった。