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マニア雑誌で見つけた素敵な人々
【歴史物 官能小説】

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【7】近所の人妻(おそらく三十代)の出したゴミを漁る男-1

【『さわやかご近所奥さん』昭和XX年6月号『ある男の独白』より】

 オレが住んでいるのはしがないボロアパート。狭い行き止まりの路地を入ったところにある。路地を挟んだ南側には数軒の古びた民家があったが、いつしか人の気配が消えたと思うと一斉に取り壊されて更地になった。風のとおりがよくなったりもして満更でもなかったが、しばらくして三階建てのマンションが建ってしまった。

 なんでも地元の有力者が絡んでいるとかで、近頃よく耳にする日照権がどうしたというような建設反対運動が起こることもなく、三階建ては狭い路地だけは残しておいてやるとばかりに敷地ギリギリに建てられ、北側にあるオレのアパートは風のとおりも日当たりもすっかり悪くなってしまった。

 オレは勤めに出るときマンションの向こうのバス通りのバス停に並ぶ。以前は民家の軒の間をすり抜けてバス通りに出られたのだが、コンクリートブロックの壁に遮られてそれもできなくなってしまった。

 民家にはそれぞれ猫の額ほどの庭がついていて、庭先には物干し竿が渡してあった。家によっては女物の下着も堂々と干されていたが、民家の住人たちは大概老年か老年にさしかかっているような者ばかりで、住人の顔、要すれば下着の使用者の顔も分かってしまえば、それ以上の行動に出る意欲も湧かなかった。

 ただ、一度、若い女が穿いていそうな白いパンティーがある家の垣根にひっかかっていて、垣根がある家には老夫婦しか住んでおらず、そこの婆さんが穿くようなパンティーではなかったから、咄嗟に手に取ると丸めてポケットに突っ込んで持ち帰ったことがある。どこからか風に飛ばされてきたのだろうが、住人の中でまだ持ち主かも知れなさそうな女を二、三人見つくろっては、パンティーを顔に押し付けながらその女の痴態を妄想していたものだ。

 工事が始まって基礎が打たれ出した頃、オレは女子大や工場の女子寮でも建たないかと都合のよい想像をしていたが、新しく建ったマンションの間取りは世帯向けのようだった。売れ行きはよかったようで、早速、部屋の数からする十いくつかの家族が入居したようだった。

 仕事に出る時間になるとオレは路地からマンションを大回りして通りに出る。夜勤のときは昼頃アパートを出る。バス停に立つとマンションがオレのアパートから奪い取った日光を浴びてそびえ立っている。どの部屋もベランダには洗濯物がはためいていて、家族で住んでいることを思わせる。女物の下着でも干されていやしないかと目を凝らすが、どこの部屋もその辺は用心しているのか見つけることはできない。ただ、三階の一室には黄色いハンカチが目を引くことがあった。きれいな新居に入れた幸福のシンボルのつもりかね…。オレは心中で毒づいた。

 それにしても、アパートに面した北側とは同じマンションとは思えないほど随分と雰囲気が違うものだ。北側には壁に配管が何本も走っていて、南側にあるような植え込みも一切ない。日を浴びて笑顔を振りまく南側と大病院の裏側を想わせる冷たさの北側。建物であっても人間と同様に表の顔と裏の顔があることを思わせる。北側はいっそのこと窓一つない壁であればまだいいのだが、マンションの各戸に通じる通路が設えてある。

 一度、こっそりとマンションに入って通路からアパートのオレの部屋を覗いてみたことがあったが、マンションの三階からは見事にオレの部屋が丸見えだった。通路にはセールスマンのような男たちも頻繁にやって来ているようだ。高給取りが住んでいると見越して頻繁にセールスに来るのだろう。

 セールスマンはそれぞれの部屋の呼び鈴を押しては何やら商品を勧めているのもいれば、何度も来てはまっすぐに部屋を訪ねてに入っていくのもいる。門前払いする奥さんもいれば、暇なのかお人よしなのか話を聞いてやっている奥さんもいる。

 「こちらのお住まいは日当たりもよろしくて大変結構ですが、夏に備えてクーラーなどいかがでしょう?」
 「もう据え付けたからウチはいいわよ」
 「奥様のお家でしたらもう一台是非おつけになってください…」

 高給取りの連中が見下ろすオレの部屋。冷房などあるはずもなく夏になれば窓を開け放してパンツだけでごろごろしていたものだが、これからはどうしたものか。ごろごろしているだけならまだしも、薄給のオレは性欲は日々自分で処理しなくてはならない。オレは荒物屋でよしずのすだれを買った。

 マンションのゴミ捨て場もしっかり北側に設けられた。しかも位置としてはオレの部屋の真下に。規模の割りに場所をケチっているからゴミ袋が路地にまではみ出している。ただ、このことはマンション建設に対するオレの怒りをいくらか和らげることになった。

 人間どんなにお高く留まっていてもゴミは出さずにはいられない。回収日の朝になるとマンションの住人がゴミ袋をさげてやってくる。オレは夜勤の時は昼過ぎまでのんびりしているから、女たちのゴミ出しの様子をすだれの隙間から覗いていることができた。亭主がゴミを出す家もあるが、たいていは奥さん連中がやってくる。

 こざっぱりとした身なりの女もいることはいるが、起き抜けですっぴん、髪はぼさぼさのような女もいる。ゴミ袋を先に出された袋にそっと重ねる女もあれば、ただただ無造作に投げ捨てるだけの女もいる。マンションの裏の顔のゴミ捨て場にやって来ては地金を晒してくれる奥さんもいる。


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