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マニア雑誌で見つけた素敵な人々
【歴史物 官能小説】

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【7】近所の人妻(おそらく三十代)の出したゴミを漁る男-2

 そんな観察をしばらく続けているとオレは気になる女ができた。おそらく三十路には達しているだろうが四十には見えないぐらいの女。小学生の娘が二人おります…とでも言いそうな風体。スカート姿は見たことがなくいつもパンタロンのようなズボンを穿いているが、丸く大きな尻が張っている様はなかなか見せる。

 尻も、そして胸もそこそこ大きいのだが、大らかな感じではなくどこかケンがあるような容貌に見えて、そんなチグハグなところもオレの好みに合った。「気になる女」などと気取ってみたが要はオレがオナペットにした女。ゴミ捨て場にあっても地金を丸出しにしない女。そんな女が出すゴミ袋は決まって黒のビニール袋。ゴミまでも中身を晒さないように細心の注意を払っているのだろう。

 だからこそオレは妄想の中でそんな隙のない人妻をオレの女にして存分に弄ぶのが好きなんだ。他の家は近所のスーパーマーケットの白い袋を使い回しているからゴミ袋の山の中でも黒いゴミ袋はよく目立ってしまってはいるが。

 ある日のこと、時間は昼前ぐらいだっただろうか。外からオレのアパートの大家で階下に住んでいる婆さんの声がする。ゴミ袋に悪さをしに来たカラスを追い払おうとしているようだ。婆さんの怒声にカラスは退散したようだが部屋から見下ろすと既にごみ袋が破られて中身が散乱している。破られているのは黒いゴミ袋だ。オレは階下に急ぐと婆さんに声をかける。

 「いいよいいよ、オレが掃除しとくから。大家さん、脚が悪いんだしさ。箒と塵取り借りるよ。ああ、ゴミ袋があるなら何枚かおくれよ」
 「済まないね。前はこんなことはなかったのにねぇ。ちゃんと網をかぶさないでぞんざいにしとくからこんなことになるんだよ、まったく…。マンションの管理人って人に電話して片付けてくれって言ったんだけどね。そういう仕事までは言われておりません、だってさ。イヤんなっちゃうね」
 「もっと早い時間に回収にくればいいんだろうけどね。目の前なのにここにはマンションからしかゴミは出せないって言うし。アパートのゴミも出せればまだいいのになあ。お役所は融通が効かなくてイヤだね」

 婆さんと適当に話を合わせてはいるがオレはゴミ袋の中味のことで気もそぞろだ。路地に散乱している生ごみを、オレはわざとらしく『まったく…』と婆さんの真似をしてため息をつきながら箒で集める。塵取りですくって新しい袋に入れて口を結びゴミ袋の山に投げ込む。黒いゴミ袋の方も破けてしまっているから、袋の中身を新しい袋に入れてやる。そしてオレはゴミ袋の山に投げ込まずにオレの部屋に持ち帰った。

 袋を開けるとオレは女物の下着の断片とわかる布切れを見つけた。ただ、歓喜したのも一瞬で、すべてハサミで無残に切り刻まれていてオレの用をなさなかった。オレは用心深い女の性格を思った。ただ、そんなことよりも驚かされたのは、紙袋の中に小さなビニール袋が入っていて、その中に大量の使用済みのコンドームが入っていたことだ。

 さすがにカラスも敬遠したその袋をオレは破く気にはなれなかったが、別の紙袋からは封が切られたコンドームの空き袋や空き箱までも大量に出てきて、あの女の旦那はどれだけ絶倫なんだと思わずにはいられなかった。そして絶倫の夫に何度も抱かれては悶えている女を想像してはオレは嫉妬しながら興奮した。結局オレはその日、婆さんに電話を借りて職場に急用ができたと伝え勤めを休んだ。

 それからと言うもの、カラスのいたずらを待ち望んでいたが、婆さんの苦情のためか、管理人がゴミ袋の山にかけられている網の具合を見回るようになってしまった。そして、さらにしばらくして女も、そして女が出す黒いゴミ袋も見ることがなくなってしまった。

マンションに越してきてから半年経つか経たないかぐらいだったのに、もう引っ越していったのか…。仕方なくオレは別の女をオナペットにしようとしたりもしたが、あの女のような妙に興奮させられるような雰囲気の女はなくつまらなかった。

 そんなことを思いながら味気なく性欲を処理してタバコをふかせる。パチンコにでも行ってウサ晴らしするかと腰を上げると今日は月末の日曜日だということに気付く。パチンコにも行けないのかと心中で毒づきながら、財布からなけなしの金を抜き取って階下の大家の婆さんに家賃を払いに行く。お茶をもらいながら婆さんと世間話をしている。

 「ああ、そうだ。この前ご近所から聞いたんだけどさ。向かいのマンションで主婦売春やってて捕まった女があるそうだよ。綺麗で身なりのいい奥さんばっかり住んでたから驚いたね。ナリはよくてもやっぱりオンナは浅はかなものだねぇ…。アンタ、人の話聞いてるかい?」
 「え? ああ、驚いたね。…それにしても、旦那だって出すもの出さなけりゃ一日が終わらないだろうに、奥さんそれだけじゃ足りないものなのかね?」
 「男ったってアンタみたいな極楽とんぼもいれば、ひたすら仕事仕事で夜はくたびれ果てて寝に帰るだけのかわいそうな亭主もいるんだよ。『企業戦士』って聞かないかい? 昔はお国のため、今は会社のためってさ」

 階下に住んでいる婆さんにオレの生活をみんな見透かされているんじゃないかと今さらながら少し焦る。オレの部屋から出るゴミはタバコの吸い殻と丸めたチリ紙ばかり。あの女みたいに黒いゴミ袋に入れて出そうか。

 「大家さん、ご亭主いたんだろ? 昼間はどうしてたんだい?」
 「馬鹿な事お言いでないよ。さあ、家賃ももらったし帰った帰った。ああ、そうだ。米屋さんから手拭いもらったんだよ、持ってくかい?」

 豆絞りの手拭いでも軒下にぶら下げておいたら、欲求不満な奥さんでも訪ねてくるだろうか。


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