《魔王のウツワ》-4
※※※
昼休み。
俺はそそくさと弁当箱を持ち、教室を出ていく。
流石に、飯の最中にあのヒソヒソ声は堪えるから…
俺のハートはギザギザではなく、どちらかと言えば、ガラスなのだ。
小さな頃から悪ガキ…
ではないが、15どころか、10くらいから不良と呼ばれていた…
だが!言わせてもらいたい!
俺は平和主義者で、喧嘩も好きではない。
成績も中の上から、上の下の辺り。
無論、盗んだバイクで走り出した事も無い。
しかし…魔王のイメージが拭えないのは、目付きとあのバカ七之丞のせいだと思っている…
※※※
いつもの様に校内にある3台の自販機の内、人気のない機種(烏龍茶と牛乳のパックしかない)から牛乳を買い、いつもの場所へと向かった。
「っ…」
だが…いつもの場所には先客がいた。
今日は四限が終わってもノートをとるのに忙しかった為に、縄張りである校舎裏の一画には、すでに女生徒3人組がペチャクチャと会話に勤しんでいる。
「仕方ねえ…」
幸か不幸か、俺には気付いていなかった様で、未だ楽しそうに笑っている。
この雰囲気を壊すことなど出来るだろうか…
いや、出来ない…
古典の反語ような感想が浮かぶ。
「他…当たるか…」
しかし、この時間帯は何処もかしこも人がいて、俺が休める様な場所は無いみたいだ。
「…屋上…行ってみるか…」
最後の希望を胸に、本来ならば立ち入り禁止となっている屋上へと続く階段を登る。
警告の書かれた鎖を乗り越え、古く、錆が目立つドアノブを掴む。
握ったノブを回すと、立て付けの悪いドアが、嫌な摩擦音を立てるも、意外とあっさり開いていった。
しばらく使ってないはずなのだが…
「此所は誰もいないか…」
屋上は閑散として、埃っぽいが、悪くは無い。
ようやく安住の新天地を発見し、飯を食べることにした。
近くの壁にもたれながら、二段タイプの弁当箱を開ける。
上の段には、朝の残りを詰めたおかずが、下の段には3個のおにぎりが入っている。
これらは自分で作ったものである。
母子家庭、一人っ子、母親育児放棄とくれば当たり前だ。
また、昔話になる。これは、俺がまだ小学生だった、ある休日の話…
『お母さん、今日の朝ご飯は?』
『これよ♪』
小さな机の上にカップ麺A(醤油)が現れた。