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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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悔恨そして決意-2


 おやすみなさい。そう返事をしようとしても、唇も舌も意識とうまく連動してくれない。画面に人差し指を伸ばして通話を終了したさおりさんが最後に見た俺の表情は、たぶん奇妙に歪んだまま動かないそれだ。
 通話が切れると、部屋の中はしん、と静まりかえった。室外のノイズはほとんど聞こえない。その静寂が俺の不安をさらに掻き立てる。やっぱり、しのちゃんは俺が二日連続で電話をすっぽかしたのを怒ってる。いや、怒っているどころじゃない。そうじゃなければ「さよなら」という単語は普通出てこない。小学3年生だから当然「さよなら」の意味はわかって言っている。そしてしのちゃんはこれまで、俺と別れるとき ―デートしたあとや、俺の部屋からさおりさんと住むアパートへ帰るとき、そして、宮古島への飛行機に乗るときも― には一度も「さよなら」とは言わなかった。いつもなら、じゃあねー、や、ばいばーい。しのちゃんは、それらの単語は明日、あるいはそう遠くない後日にまた会うであろう俺へのしばしの、あくまで一時的な別れのあいさつとして使っていたはずだ。「さよなら」は、それとはニュアンスが違う。
 よろよろと立ち上がり、ベッドに身体を投げ出す。あ、スマホ置いてきた。目線を送った先のテーブルの上に、しのちゃんのために買ったお菓子の袋がある。明日出勤前にコンビニから発送しようと思っていた袋。そのライトグリーンの袋に、さっきのしのちゃんの表情が重なる。あの、にへー、と目尻を下げて笑う表情も、しゃべり終わると最後の母音の形のままに口が開いている表情も、俺のくだらない話に呆れながらも笑ってくれるやさしい表情も、今日のしのちゃんからは見られなかった。いや、それどころか、今までに見たこともないような、感情の表出が薄く、俺と目線を合わせてくれないしのちゃん。
 まんじりとしないまま朝を迎える。機械的に顔を洗い口に何かを入れ家を出て電車に乗る。空港行きのドアが閉まってから、ヒゲ剃ったかな、と頬に手をやるくらいにすべてを無意識の流れで行っている。交通量の多い大都会に住んでいたらどっかで車に轢かれてたかもな。
 朝礼が終わり、いつものようにチェックインカウンターの準備を始める。ぱたぱた、と足音がして、顔を上げると琴美が駆け寄ってくる。

「これ、デスクに置きっぱなしだったよ」

 琴美が右手に持っていたのは今日の搭乗者リストだ。たしかにこれがなければカウンター設営作業は先に進まない。俺、なにをぼんやりしてたんだろう。

「サンキュ」

 いつもどおりの声を出した、つもりだった。琴美が妙な表情になる。

「どうした?なんか、寝不足のような声してる」

「…うん、まあ」

 こういう話の展開になると、詮索好きの琴美の追求が始まるのが常だ。「どしたどした?悩み?ねえねえ、もしかして恋の悩み?」とか。けど、今朝の琴美は妙な表情のままだ。

「顔色も悪いよ、ちょっと青ざめてる。身体の具合悪いの?」


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