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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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さよなら-3

 
 やばい。そうだ、明日が休みっていうこともあって、夕ごはんを食べ終わったらさおりさんのスマホを使ってしのちゃんとビデオ通話しよう、と言ってたんだった。麻衣ちゃんたちとの展開がここまで濃密に行くとは思わなかったし、帰ってきてからのんびりシャワーしたりましてやオナったり射精後にまったりしたりしている場合じゃなかったんだ。
 待ち受け画面に切り替える。もう寝てしまったしのちゃんは当然ながら、お店の仕入れやなんやで結構朝が早いさおりさんに電話をかける時間ではもうない。俺は、

「すみません、ちょっとバタバタしてしまって。明日はかならず電話する、としのちゃんに伝えてください。おやすみなさい」

と打ち込み送信し、天井を仰いでため息をついた。まずいな、しのちゃん怒らせたか。綾菜ちゃんが俺に抱きついてきたのを目の前で見たときのヤキモチの怒りも大きかったけど、電話してこなかった理由がまさか他の女の子二人を裸にして「へんたい」なことをしていたから、なんてことをしのちゃんが知ったら怒るどころじゃないだろうな。いや、さおりさんが知ったら即刻しのちゃんと俺を別れさせるんじゃないか。
 明日は、何にも優先してしのちゃんとビデオ通話だ。しのちゃんの声が聞きたい、それは確かに俺の真実の叫びではある。



 春から夏へとゆっくり季節がめぐりかけている時期の朝はこんなにも清々しいのか。窓から漏れる朝日に目を覚まし自然にすっ、と起き上がって心地よく伸びをする。スマホの待ち受け画面の時計は六時ちょっと前を示している。
 鏡に映る髪に寝癖はほぼついていない。ヒゲも、まあ許容範囲かな。軽く顔を洗い歯を磨き、長袖だけどサラサラした薄手の生地のシャツに着替えて外へ出る。朝の散歩、と言うとなんだか年寄り臭いことのようだけれど、やってみると昇り始めた朝日とそよそよ吹く南南東の風が心地よい。そうか今日は土曜日か、だからまだ早朝とはいえ街がこんなに静かなんだな。
 俺の足は、しのちゃん達が住んでいたアパートのそばを通り線路を越える道へと自然に向かっていた。気持ちの良い土曜日、となると、俺に蘇るのはしのちゃんとよく待ち合わせしたはるかぜ公園だ。
 あいかわらず造成の進まないマンション建設予定地の向かいの柵の間を抜けてはるかぜ公園に入る。例によって人の気配のない公園は、けれども雲の少ない空からの太陽光がさんさんと降り注ぎ、緑が濃くなりつつある広葉樹の葉を明るく照らしている。しのちゃんが俺を待っているときによく座っていたベンチも、さおりさんと初めて顔を合わせたときに座った、トウカエデの下の四人がけテーブルも陽射しを浴びて白っぽく光っている。
 俺は赤い自動販売機でジョージアのロータスリーブラックを買い、しのちゃんがいつも座っていたベンチに腰掛けた。栓を開け、よく冷えたコーヒーを喉に流し込む。
 アイスコーヒーが心地よい季節になった。そういえばしのちゃんと出逢ってから、もうすぐ一年が経つんだな。ここ、はるかぜ公園でもいろんなことがあった。最初の頃はしのちゃんとのデートはいつもここだった。しのちゃんに告白したり、しのちゃんにせがまれてあの丸い屋根の多目的トイレで勃起したおちんちんを見せたり、しのちゃんのかわいい小2ワレメを見せてもらったり、それから、さおりさんからしのちゃんとしばらく会わないでいてほしい、と通告されたり……もしあのまましのちゃんと別れていたら、この公園も、もしかしてあのときしのちゃんがべそをかきながら買ってくれたこのロータスリーブラックも、つらい記憶としてトラウマになったかもしれない。
 けれど、今の俺は、緑の風を受けながらさわやかな朝日の中で冷えたロータスリーブラックの苦みを楽しみ、なつかしい場所を見るような眼で正面の四人がけテーブルを眺めている。もうあのときの、何日もしのちゃんに会えなかった寂しさやさおりさんからどんな対応をされるか不安だった日々はごめんだ。「こいびと」がいて、その「こいびと」との交際に理解を示してくれている人たちがいて、そして、なによりも「こいびと」と深く愛し合って「こいびと」同士でないとしないような濃密な関係を維持している。これに勝る幸福があるだろうか。
 穏やかに吹く風がしのちゃんとの幸せな逢瀬のときを脳裏に蘇らせる。こんな風が吹く季節に始まったしのちゃんとの「こいびと」関係、あの頃転校してきたばかりだった小学2年生のしのちゃんは、また転校していった先の新しい学校で小学3年生になった。そして俺は、3年生になったしのちゃんをまだ知らない。しのちゃんが宮古へ飛び立ってからもうすぐ三ヶ月、背も伸び身体の柔らかさも増え少しずつ二次性徴期へと近づいているしのちゃんの、その肌も息臭も同じように成長しているのだろうか。生えかけだった永久歯は伸びたかな。生えかけといえば……いや、小学3年生ではまだせいぜい産毛程度だな。
 あたりまえのようにエロい想像をしている自分に苦笑いして、俺は飲み終わったロータスリーブラックの空き缶を自販機の横のゴミ箱に捨てた。そこでもう一度、トウカエデの下のテーブルを見返る。あの日から、ほんとうにいろんなことがあった。でも、仕事でどんな嫌なことがあっても、あの、もしかしたら二度としのちゃんに会えないかもしれないと絶望したときに比べたらたいしたことではないと思えるようになった。あんなにつらい思いをして、けれども繋がり続けることができたしのちゃんとの「こいびと」関係、これからもずっと、大切にしていかなきゃいけない。


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