さよなら-2
そう言ってひょこ、と幸恵ちゃんが頭を下げると、うつむいていたままの麻衣ちゃんも顔を上げ、こく、とうなずくように会釈した。
「あ、いや ……こ」
こちらこそ、と言いかけて慌てて口をつぐむ。それはいくらなんでもあんまりに失礼な言い方になる。こちらこそ、いっぱい裸を、おっぱいや恥毛やおまんこを見せてくれて、エッチな気分のときの体臭やあえぎ声の息臭や濡れたおまんこの恥臭を嗅がせてくれて七回も射精 ―空イキだけど― させてくれてありがとう、だなんて口にしちゃいけない。
場を急速に持て余し、そそくさと身支度を整える。床の上のトートバックを拾おうとすると、その横に幸恵ちゃんがオナニーの途中に足かなにかでベッドから落としたショーツが軽く広がっていた。裏地をこちらに向け、露出した膣当てがまだ湿っているのがわかる。思わず手を伸ばしそうになって自重する。こっちも賢者タイム、幸恵ちゃんも麻衣ちゃんも、そろそろ我に返るタイミングなはずだ。
肩をもたれ合っている二人に小さく手を振って玄関へ出る。靴を履きながら、ベッドのほうを振り返って麻衣ちゃんと幸恵ちゃんの横からのおっぱいを目に焼き付け、もう一度こっそりと鼻から大きく息を吸って幸恵ちゃんの部屋の匂いと二人の体臭や膣臭の名残りを収め、ドアを開けて外へ出た。
駅から家への途中にはコンビニが二軒ある。ひとつは線路沿いのファミマで、もう一軒は歩道橋からの道を折れのアパートに通じる道をいったん通り過ぎたところの角に立つセブンだ。普段はファミマを使うことが多いのだけど、今日はほんのちょっと遠回りしてセブンでビールを買う。ファミマのレジ、この時間だと幸恵ちゃんっぽい雰囲気のバイトの子が入っている率が高いんだよな。
ビールを入れた冷蔵庫のドアを無駄な罪悪感を振り切るように閉め、服を脱いでシャワーの栓を開く。水がお湯に変わって身体の血行がさらにめぐり始めると、麻衣ちゃんと幸恵ちゃんのあられもないオナニー姿が脳裏に蘇り、鼻先に二人の、性的に高揚しているときの温度高めの息臭が、処女膜や小陰唇や未処理の恥毛がくっしょりと濡れたおまんこの恥臭が戻って来る。同時に、あれほどオーガズムを繰り返して疲弊しているはずのおちんちんがむっくりと勃起し、仮性包茎がぺろ、と剥けて麻衣ちゃんと幸恵ちゃんに至近距離で見られた亀頭が露出する。
速攻で頭と身体を洗い、バスタオルを広げるのももどかしく水気を拭き取る。生乾きの全裸のままパソコンの前に座り、ブートして深い階層へのショートカットをダブクリする。「麻衣ちゃん」と名付けた黄色いフォルダの中の、展望デッキで盗み撮りした麻衣ちゃんの乳首のどアップ画像を開く。
くはぁ、これこれ。ついさっき至近距離で見た、それも勃起した麻衣ちゃんの薄茶色の乳首。乳房のサイズの割には大きく、勃起しているときには指先でつまむと十分な弾力を返してきそうな、まだ男に触られたことももちろん愛撫されたこともない、19歳処女の乳首。この乳首やふくらみの小さい乳房、生えるがままにしっ放しの恥毛や薄ピンクの小陰唇そして意外にエッチな白濁愛液を漏らす膣口の処女膜を俺に晒しながら麻衣ちゃんが見せてくれた稚拙で未熟なオナニー。幸恵ちゃんのむっちりした裸体から立ち込める甘く幼い体臭や麻衣ちゃんのいつもよりも匂いが強くなった息臭が蘇る。麻衣ちゃんと幸恵ちゃんの19歳処女おまんこ、麻衣ちゃんと幸恵ちゃんの処女の身体からの無防備過ぎる生々しい匂い。まだセックスの経験のない、自分に自信のないうぶっ子男の子や性への関心はちゃんとあるけど膣口やクリトリスを軽くいじる程度の稚いオナニーでイッてしまうような未成熟な麻衣ちゃんと幸恵ちゃんの性欲。
俺の仮性包茎が、八回目の射精を目指して脈動する。もう右手はいらない、太腿で陰茎をぎゅぅと挟み、麻衣ちゃんの無防備な胸、ついさっき間近で生で見た19歳処女乳首が27インチいっぱいに映し出されたモニタを空いた両手で抱くように掴む。
ああ、麻衣ちゃん、彼氏もいたことがなくてセックスも知らないのに、俺の前であんなに恥ずかしい痴態を裸で見せてくれて、恥ずかしい匂いをいっぱい嗅がせてくれた麻衣ちゃん。このかわいい、ちょっといやらしい形にふくらんだおっぱい、これから麻衣ちゃんの彼氏になって麻衣ちゃんとセックスして麻衣ちゃんの処女を奪う男よりも俺が先に至近距離で見た麻衣ちゃんの乳首や乳房やおまんこ、そして麻衣ちゃんの友達の、やっぱり処女で地味ぽっちゃりの幸恵ちゃんの甘酸っぱい息臭と柔らかそうなおっぱい、濡れてエッチな匂いをぷん、と放っていたおまんこ、麻衣ちゃんも幸恵ちゃんも裸になって、濡れたおまんこを弄ってオナニーして、あ、ああああ。
ティッシュを左手でかぶせた亀頭から、ぴゅる、程度だけどもやっと溜まりかけた精漿が生産した精液が放たれた。同時に、やや回復しかけていた疲労がどっ、と全身を再度巡る。麻衣ちゃんの乳首画像が表示されたままのモニタの前で、俺は五分くらい放心状態で座り続けていた。
どのくらいそうしていただろう。ぼんやりとした頭、窓の外のあらゆる音がミックスされたホワイトノイズしか聞こえていない耳。それらをかすかに刺激する穏やかそうでどこかせわしない重低音が、ベッドのほうから伝わってくるのに気づいた俺は、あわてて脱衣所に戻って服を ―誰も見ちゃいないのに― 着てベッドの上に転がっているスマホの画面を開いた。さおりさんからのトーク着信。それも、なんかいくつもの着信が屏風のように重なっている。
最新のトークをタップすると。未読のメッセージがずらずらと展開された。いちばん下には、丸く黄色い顔が目を閉じていびきを掻いている絵文字と二行くらいのメッセージが表示されている。
「お兄ちゃん忙しいのかな……しのが、ちょっとふてって寝ちゃいました。あしたはかまってあげてね。おやすみなさい」