第八章 輝き-1
【啓介と同居 三ヶ月目】
【20●1年3月15日 AM11:50】
リビングで。
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リビングに戻ってソファーに座り、恵はドキドキしながら包みを開いた。
「わぁ・・・」
見覚えのある有名ブランドのケースを開くと、思わず声が出てしまった。
金色に輝くブレスレットウォッチが入っていた。
それを手に取り、かざして見ると鎖の一つ一つに自分の顔が小さく映り、何とも言えない高貴な光を投げかけてくる。
恵は陶酔した表情で見つめていた。
どの位、時間が経ったのであろうか。
ハッと気が付くと時計を見た。
もう12時をかなり過ぎている。
慌ててインターホンの受話器を取り義父に電話をした。
呼出し音が長く続いていたが出る気配がない。
受話器を置き、改めてブレスレットを眺めてみた。
義父は「安物」と言っていたがとんでもない。
よく女性雑誌等で見る高価な品であった。
少なく見積もっても五十万円以上はするだろう。
恵は動揺を隠しきれずに胸をドキドキさせていた。
結婚してからも、それ以前も、こんなに高価な物を買った事が無い。
ずっと家計を切り詰めた生活は、恵を女らしい物から遠ざけていた。
ましてプレゼントなら尚更である。
直ぐに返そうと立ち上がりかけたが、金色の輝きが恵から力を奪ってしまう。
ヘナヘナと腰を下ろすと慎重にそれを腕にはめてみた。
又、ため息が出た。
恵の瞳はブレスレットの輝きに合わせるかのように潤んで光っていた。
白くしなやかな腕に金色が美しく映える。
恵は飽きずに、いつまでも眺めていた。
あれ程、義父からの援助は拒否していたのに。
家の他に何か貰ってしまうと、全てにおいて頭が上がらなくなりそうで嫌であったのだ。
ひたすら意地を張っていた。
だが、いざこうしてプレゼントされると、嘘のように気持ちが楽になっていく。