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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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後ろめたいこと-1

 今朝のホームルームで担任の先生が、なにかムニャムニャ言っている。元々声も小さくて滑舌も悪いから、何を喋っているのかよくわからないのだけれど、今朝はことさら聞き取りづらかった。

 それでも、何とかわかったことは、要すればどこかのクラスの生徒が他校の生徒とつるんで万引きをして警察に捕まったらしい。捕まったと言っても「逮捕」みたいなことではなくて、万引きした店からお巡りさんに引き渡されて、警察署に連れていかれてお説教されて家に帰された…というようなお話だった。

 ついては、諸君もそのような不祥事を起こすことのないように…ということを先生は喋っていたようだ。ホームルームが終わって、担任の先生が教室から出ていく。最初の授業が始まるまでの間、前の席の子が振り向いて話しかけてくる。

 「喧嘩はあかんよな?」
 「えっ、喧嘩?」
 「あんた、センセの話、聞いてなかったんか?」

 わたしには『我が校の生徒が他校の生徒と万引きをした話』に聞こえたのだが、どこをどう聞き違うと『喧嘩の話』になるのだろうか。

 「本当に『喧嘩』って言うてた? 『け・ん・か』って」とわたし。
 「そんな話のように聞こえたんやけどな。まあ、そう言われてみれば『喧嘩』とは言ってなかったかもしれんな。『喧嘩』じゃなくて何だっただろ。『決闘』かな。『いざこざ』?」
 前の席の彼女は、自分が聞き取った意味から、関係のありそうな単語を並べる。

 「『ケットウ』も『イザコザ』も『ケンカ』とは聞き違わないよねぇ」
 「まあ、とにかく、なんかいざこざ起こして捕まったみたいに聞こえたんやけどね。それにしてもあんたこそ本当に『万引き』の話に聞こえてたんか?」と前の席の子が反撃してくる。

 「そう言われてみれば『万引き』じゃなくて何だろう…『盗み』?」
 「『ヌスミ』って、アンタ、さすがにそれはないやろ。おっかしいわぁ」
 「まあ、なんだっていいわよ、わたしたちには関係のない話だから」
 「そうね。なんにも後ろめたいことはしてないし」

 そう言って彼女が前を向く。1時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り、若い女の先生が入ってくる。担任の先生はよぼよぼの男の先生だけど、この先生は対照的にハキハキと大きな声で喋るからヒアリングに苦労することはない。

 ただ、どんどん自分だけの世界に入っていってしまうみたいで、授業中はひたすら自分が喋り続けるだけ。不意に当てられたりすることもないから、わたしはついつい授業を受けていることを忘れてボンヤリしてしまう。

 (『後ろめたいこと』か…)

 前の席の彼女の後姿を眺めながら、彼女が呟いた言葉を思い出す。

 (わたし、喧嘩も万引きもしないけど、『後ろめたいこと』なら毎日…)

 教室の黒板には二月十八日とチョークで書いてある。

 (もう2月も半分以上過ぎたのか…。年が変ってもう五十日くらいかな。やめられないな…『後ろめたいこと』)

 大晦日の夜に遠くの除夜の鐘を聞きながら、布団の中で自慰に耽るわたし。あれから五十日というもの、一晩も欠かしていないわたしの『後ろめたいこと』…。納屋で見つけた女性誌の記事やら漫画本やらを漁っては自分の部屋に持ち込んで。

 (ある意味『盗み』みたいなものね…。イヤだわ)

 ホームルームで伝達された不祥事と自分の行為がつながって心の中で苦笑する。

 (昨日の晩は、お父ちゃんとお母ちゃんがナニしてるのを、襖の外から聞いてしまったし。お母ちゃん、気持ちよさそうだったなぁ…。『アンタぁ、アンタぁ』ってお父ちゃんのこと呼んで。あぁ、これは『盗み聞き』ね…。イヤぁね)

 あそこをジンジン疼かせて両親の睦み事を盗み聞きしているわたし。二人の声がしなくなって、慌てて足音を立てないように離れていく。まるで泥棒のよう…。そんなことを思っているうちにチャイムが鳴って授業が終わった。わたしも自分だけの世界から戻ってくる。

 すぐに前の席の子が振り向いてくる。

 「わかったわ! さっきの話。『泥棒』、『泥棒』よ」
 「えっ? な、なんなの、『泥棒』って」

 (この子は読心術でも身につけているの!?)

 いささか狼狽していると、晴れ晴れとした顔で彼女が続ける。

 「『ドロボー』じゃないって。『トロォゥボゥ』よ! 『trouble』、『トラブル』よ」

 『泥棒』という言葉を、わざわざ巻き舌で英語みたいに発音してみせる。どうやら、担任の先生は『トラブル』という言葉を使っていたという手掛かりを見つけたということらしい。

 「…はあ?。…ああ、そうかぁ。あん先生、日本語は何を言っているのかようわからんし、英語はまた妙な発音するからなぁ。『トロォゥボゥ』じゃなくてせいぜい『トラボー』ぐらいなものだと思うけど…」
 「まあね。結局は『他校生とのトラブル』と『他校生徒と泥棒』。似てるよね? それにしても『泥棒』って聞こえていた割に、なんで『マンビキ』の話になっちゃったわけ?」
 「さあ…? 『万引きは泥棒の始まり』ってことかしらね」
 「なんか違うと思うけど」

 わたしの『後ろめたいこと』は毎夜の自慰行為…。そして『万引き』と聞く度に『マンズリ』を思い浮かべてしまうこと…。前夜、両親がこんな会話をしていたことをわたしは知る由もない。

 「ふぅ。よかったで、お前」
 「アンタ…また〇子が来とったね」
 「まあな。泥棒みたいに忍んできて聞き耳立ててからに。どうなんや? 娘にアヘ声聞かせる気分っちゅうのは。さぞかしええもんらしいの。大した善がりっぷりの濡れっぷりやで」
 「自分の娘にそんなこと…。でも、あたしもそうして育ったもんやしね。ええと思うとるけど」
 「まあ、俺もやけどな。どれ、今頃マンズリしとる〇子のアヘ声でも聞きにいくか」
 「バカ」 


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