one-sided love*happy end*-3
「…最近……ハユ…無理してる…。」
「え…?」
思わず顔を上げると、兄やんの方が俯いてた。銀髪が、鼻先を掠める。
「あんま…俺の隣りに、いない…ね。」
「それは…!」
だって…一緒にいたらアタシ…。
ふ、と兄やんは顔を上げた。
「だから…今、嬉しい。」
くしゃくしゃと、頭をやられる。
大きい手。でも、薄くて骨っぽい細い手。
その手に、自分の手を重ねる。
「俺の事…嫌なんだってのは分かってる…。前みたく…、必要以上にくっついて来ないのも…、無理に関わってるのも…。」
……え…?違う…違うよ兄やん!
「前みたいに…子供じゃないんだもん…な。大人だもんな…。」
「ちがっ…!」
「それって…きっと俺が悪いんだ…。俺が…。」
そう言いながら、アタシの揺る巻きにされた髪に触れる。
前に、兄やんが『かわい…』って言ったから…それから、ずっと揺る巻き。
「…変…なんだ…。俺…ハユと一緒だと…。」
貫くように、真っ直ぐ視線。繋いだ指先から、感じる鼓動。
口元が、上がる。
「幸せなんだ。」
―――――………
「兄やん!帰って来たの?」
駅の改札口で偶然見かけた、懐かしい後ろ姿。
銀色だった髪の毛は、いつの間にか黒く染められ、無造作にセットされている。
「…?ああ、ハユ…。」
呼び止められ、振り向いたその人は、後ろにいるアタシに気付いた。
「今卒業式終わったとこ!泣いちゃったぁ!」
今日は、高校の卒業式。みんなと会えなくなると思うと、やっぱり涙を堪える事が出来なかった。
「くっくっく…泣いたの?」
肩越しに伝わる、あの笑い方。
変わらない、あの時と…。