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楓南と恵未
【ラブコメ 官能小説】

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楓南と恵未 -9

「ひょっとして楓南が来てたの?」
ウワッ、ずばりお見通しだ。万事休すか? 心臓の鼓動がドッドッドッドッ…と一段と大きく速く鳴り響く。
「うん、あの子のコスメの匂いだわ。朝から出かけてたから、楓南が来てたんでしょう。」
頭から血の気が引いて気が遠くなりそうだ。
「あの子のことだから既成事実を作ろうってそそのかしに…」
恵未の言葉が終わるのを待たずに
「すまない! 恵未に余計な心配をさせないようにと思って『誰も来てない』って言ったんだ。楓南ちゃんは来たんだけど、説得して帰したんだ。指1本触れてない。俺はウソのつけない男なんだっ。」
平身低頭して謝り、必死の弁解をする。ここはあくまでも白を切り通さなければ取り返しのつかないことになってしまう、踏ん張りどころだ。
「ふ〜ん、わかった。一応信用しておくわ。昨日の今日だし、あなたも2日続けてはできないでしょう?」」

 昨日の情熱的な営みで楓南に対する優位性を確信して気持ちにゆとりができたのか、心が少々痛むがウソも方便、今日のことは楓南に固く口止めしておかなくては。
「ほんとにあの子は困ったものだわ。母にも頼んできつく言っとかなきゃ。」
それで諦めてくれれば俺も安心なんだが、楓南は多分聞く耳を持たないんだろうな。
俺は何気ない素振りで寝室に行き、楓南がいたずらを仕掛けてないかここも一応チェックしてみた。
うん、多分大丈夫だろう。
「今日はもう実家には戻らないんだろう?着替えてきたら?」
「そうね。」
「タンスは恵未が出ていった時のまま開けてあるから。着替えてる間にコーヒーでも淹れておくよ。」
「ありがとう。」

楓南が何も仕掛けずに帰ったのがわかったので少し気分が落ち着いてきたのだが、隣の部屋から
「家中あの子の匂いがするわね。」
一難去ってまた一難か?
「窓を締め切っていたから匂いがこもってるんじゃないの?」
また動悸が激しくなった。落ち着け!ついコーヒーを淹れる手が震えて、ガチャガチャっとカップがぶつかる音が大きく響く。
「そうね、ムカつくから窓を全部開けて空気を入れ替えてよ。」
「うん、わかった。」
コーヒーの香りを家中に広げてなんとかごまかそうとしていると、恵未がキッチンに入ってきて穏やかな声で言った。
「ああ、コーヒーがいい香りね。」
それを聞いてホッと胸をなでおろした。

 しかし、まだまだ危機は続く。
「前に私が使ってたここのマンションの鍵はどこに行ったのかしら。」
「鍵? 確かリビングの棚においてあったと思ったんだけど。」
しまった、さっき楓南に渡した鍵だ! 慌てていたのでスペアキーと間違えて渡してしまったんだ。
「ちょっと見当たらないから、とりあえずスペアキーを使っておけば?」
と俺が保管していたスペアキーを取ってきた。恵未に渡す時に小刻みに手が震えた。落ち着け!
「どこかに仕舞ってあるはずだから、そのうち出てくると思うけど。」
「そうね。」
大丈夫、怪しんではいないようだ。




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