突然の悲劇-3
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その翌日から、葬儀の手配に役所への手続き、事故を起こした相手側の保険会社との折衝など、武司は妻の死を悲しむ暇がないほどの、忙しい日々を送った。勤め先には忌引き休暇を申請して、それらの対処に奔走した。
一方、娘の茉由は、以前のように塞ぎ込むようになってしまった。武司は仕事を休みにしても家にいることが少ないため、自ずと父娘の会話も少なくなった。
理恵の葬儀の際、実家から出向いた彼女の両親は、茉由は自分たちが引き取ると、武司に相談を持ちかけた。本来、武司とは血縁関係のない茉由は、今後の彼の人生の重荷になるのではないか、残された武司を気遣う理恵の両親はそう判断したのだ。ところが運悪く、茉由はその話を耳にしてしまった。武司はもちろんその話を辞退した。今後も茉由と父娘として暮らしていくことを決めていたからだ。だが、自分は邪魔者だと、そう思い込んだ茉由は、ますます自分の殻に閉じこもるようになってしまった。
(このままではいけない)武司は危機感を覚えていた。だが目の前の、消化しなければいけないことがあまりにも多すぎた。
全てを終えるまでに二週間近く掛かった。
張り詰めていた糸が切れたように、体調を崩した武司は数日寝込んでしまう。勤め先は、これまで溜まった有給休暇の消化ということで、引き続き長期休暇を得ることができた。
どこにも行かず、なにもしない日々を過ごすうちに、武司はようやく妻の死を実感し、深い悲しみに浸ることになった。
亡くしたのは妻ひとりではなかった。事故当時、彼女が妊娠していたことを、武司は後から知ることとなった。まだニか月にも満たない小さな命だったそうだが、彼は初めての、自分の本当の子供も、ひと目も顔を合わせることなく失ってしまった。そのことも追い打ちをかけるかのように、彼にさらなる精神的なダメージを与えていた。
(どうして俺の家族はみんな死んでしまうんだ。俺のせいなのか? 俺がなにか悪いことでもしたっていうのか……)
両親も事故で亡くしていた彼は、ただ自分を攻め続けた。