厄介なアイツ-7
凄まじい正義の連鎖に、桜庭はたじろぐばかり。
言葉すら出せずに口をパクパクと動かし、膝はガタガタと震えている。
『お、オレは何も…ッ!ひいぃッ!?』
周りにいる男性が、一斉に掴み掛かる。
あっという間に桜庭は倒され、数人に組み伏せられた。
『お、オマエッ!オマエ調子に乗ってッッッ』
『ッ……!!??』
佐藤も高橋も、いや、吉田と伊藤も目を疑った。
あろう事か、佐々木までもが桜庭に掴み掛かり、必死に腕を押さえつけているではないか。
男共は静かに、しかし迅速にその車両から逃れた。
痴漢を取り押さえたとなれば、それは私人逮捕となる。
名前や住所を警察に聞かれるのは避けようがない。
{次は〇〇駅。降り口は左側です}
駅に滑り込んだ電車が停車すると、その車両には駅員や警察官が乗り込んできた。
なぜ桜庭を再逮捕に導こうとしたのか……その理由を上っ面だけ聞いて、生返事をしていたからこんな真似をしでかすのだ。
『ど、どうします?』
『どうもこうも無えよ。まずは駅から出るぞ』
男共は駅から出て、駐車場脇の自販機の前に集まった。
缶コーヒーでも飲んで、少しは気を落ち着かせようとしていた。
『あのバカ、緊張感もクソも無えからあんな真似しやがるんだ』
『面割れしたヤツとは、もう連めねえなあ』
鈴木の失望と怒りは、男共の共通する思いだった。
顔の知られたヤツと行動を共にするなど、まさに自殺行為だからだ。
『……高橋、佐藤、文句は無えよな?』
二人は少しだけ沈黙した。
佐々木を仲間に引き入れたのは、他ならぬ自分達なのだ。
これまでの出来事が頭を過ぎる。
大失態をやらかした無能者だとしても、ついさっきまでは仲間だったのだから。
『おチンチンを見ただけで泣いちゃうような、清純な少女を飼いたいなあ』
『やっぱりJCですよ。個人的には18才からババアですから』
『愛ちゃんのモリマンでおチンチンを鍛えて、早漏を克服するんだ』
……碌な思い出が無い。
あんなサイテー野郎、仲間にしておく必要は無い。
『ボクらに意見はないですよ。アイツは絶対に許されないコトをしたんですから』
『最初に誘った時に、『下手こいたらヤバい』って伝えてあります。全部アイツの責任です』
異論など有ろうはずがない。
別にアイツが居なくも、あの日、自分達だけでも川上雪絵は見つけられたはずだ。
そしてアイツが居なければ、川上愛をもっと好きに出来た。
〈戦隊ヒロイン〉という箔がついた森口涼花だって、二人で仲良く嬲り者に出来ていたはずなのだ。
『決まりだな。ま、今日のトコロは止めにするか。オマエら先に帰ってろ。アイツには俺から話しておくよ。あと2、3時間もしたら……』