アタシの沈黙-3
少し秋めいて来た。
アタシはひとり、隣の街のショッピングモールに出かけた。
大きなリサイクルショップを歩いていると、
「あ、せんぱい……せんぱーい!」
リリンちゃんがアタシを見つけて駆けよってきた。
アタシは姿勢を低くして、リリンちゃんを迎えた。
そのリリンちゃんの後ろから、あの野郎が歩み寄ってくるのも、アタシの視野に入っていた。
でもアタシは、あの野郎の顔にもはっきり視線を向けることができた。
あの防犯カメラの映像は、1200時間(=50日)を過ぎると消去される。
カメラが見たあの強姦の一部始終は消え去って、今さらアタシがほざいても証拠はない。
アタシは妊娠してなかったことを確認できた時から、何も崩さない方向を選んだんだ。
だけどアタシは、歩み寄ってくるあの野郎の目に、異様な輝きを感じた。
アタシはとっさにリリンちゃんを抱き上げた。
リリンちゃんの直後にいたあの野郎は、いきなりアタシの足元に倒れこんだ。
よく見ると、あの野郎はアタシの前に土下座したんだ。
「ごめんなさいっ!」
あの野郎は、周りのひと達がみんな目を向けるほどの声をあげた。
「オレはクズですっ!
許してくれとか言えません!
裁きを受けますっ!」
周りのひと達は何事かわからず遠巻きに眺めてる。
その中には「何があったの、先輩?」という顔をしたひゞかの姿もある。
アタシはリリンちゃんをグッと胸に押しつけて、ジッとあの野郎を見ていた。
(……このオトコは……!
クズやとわかっとるんやったら、クズを貫きとおせや!)
【おしまい】