BLACK BOXを守る者-3
「高嶋謙也だって馬鹿じゃない、そんな簡単に奪われるトコに置いておくかな?」
「そうですね。まず厳重に保管してるはずです。自分にしか分からないトコか、ごくごく親しい人にだけ教えていたとか。」
「ごくごく親しい人…家族?でも妻の琴美とは仮面夫婦状態。琴美に情報を与えてるとかまずない。でも奪われたって事は裏切られたって事でしょ?高嶋謙也を裏切った者と言ったら…」
片山は、1人いるだろう、的な目で若菜を見つめていた。
「あっ…!佐川明子!!」
加藤謙也の一番弟子で謙也の入れ知恵や権力で城南市の質にまで登り詰めた腹心、佐川明子が頭に浮かぶ。
「佐川明子が全裸張り付けになった時点ではBLACK BOXが奪われた事に気づいていなかったはず。佐川明子は高嶋謙也の裏金隠しのビッツコインを根こそぎ奪ったとの情報が入ってます。高嶋謙也に対して謀反を起こした可能性はかなり高い。それに気付いた高嶋謙也は今、目の色を変えて佐川明子の行方を追ってる事でしょう。」
「となると、川口元春と小渕愛子と佐川明子は、グルって事?」
「それはまだ分かりません。ただ単に佐川明子がBLACK BOXを奪った事を知り身柄を拘束したのか、初めから仲間で高嶋謙也からBLACK BOXを奪う計画だったのかは、まだ。」
「どちらにせよ今、BLACK BOXは佐川明子が手にしているって事ね?」
「はい。」
若菜はまた少し考え込んだ。
「片山さんさんと川口元治はグルなの?」
「違います。それは嘘ではありません。」
「そっかー。この事件の大元は目立対横芝。そしてその流れでBLACK BOXを巡り、高嶋謙也と警察がその行方を追っている。でもじゃあ川口元治は何の為にBLACK BOXを追ってるの?高嶋謙也側でもない、我々警察側でもない。じゃあ川口元治は何に属するの?」
「そ、それは…」
言葉に困っている様子の片山。BLACK BOXの事は素直に口にした男が口に出来ない案件…、それは日本の警察にとって大きな光であり闇であるからだ。それを片山は知っている。
「黒警…」
「!?」
これまで動揺を見せなかった片山が初めて、しかも大きく動揺を見せた。
「し、知ってたんですか…?黒警を…」
「まぁね…。ただ何の実態も知らないし、そもそも実在するものかどうかも分からないけどね。噂の範疇を出ない存在だけどね、私にとっては。」
「…」
若菜が黒警なるものの存在を知っていた事に衝撃を受けた片山であった。