THE BLACK BOX-9
「確かに加藤綾美さんはリョーと名乗っていた瀬川涼子さんを追っていなぎ市の膣楽園と言う風俗店にガサ入れした時に発見したんですよね?」
「そう。田口はいつかは私達が膣楽園に辿り着く事は分かっていたはず。そんなトコに何故拉致した重要な綾美さんを監禁していたのかが謎だったの。だって見つけて下さいって言ってるようなもんだからね。あれだけ散々探して見つからなかった綾美さんが、他の捜査で踏み込んだ風俗店にいたとか、出来過ぎでしょ?ただ綾美さんを発見出来て私達は当時ようやく任務が果たせた気持ちになっていたのは確か。今考えればあれがメッセージだったのね。BLACK BOXを手に入れたぜと言う。」
「田口が加藤総監と取引をしたって事だと思います。そこで加藤総監と田口の間で秘密裏に取引が行われた。田口は綾美さんを返す代わりにBLACK BOXをよこせ、と。」
「うん、間違いないと思う。もし未来が変わっていたら、私はレイプされ、その動画が世界中に公開された挙句、BLACK BOXの暴露によって警察は奈落の底に突き落とされ、日本は田口の勢力に飲み込まれとんでもない世界になってたかも知れないわね。恐ろしいわ…」
「ホントです。こう言っては何ですが、やはり田口はあの時上原さんの手によって抹消されるべき人間だったんだと思います。」
「いかなる場合でも人の命を奪う事は絶対にしてはいけない事。私は自分の犯した殺人を正当化するつもりはないわ?」
「そうでしたね、すみません。」
「それはそうと、となると…田口が居なくなってBLACK BOXを手にしたのは…」
「そう、サーガこと佐川健吾です。」
「佐川かー!なるほど、また謎が解けたわっ。策士としてはなかなかの能力はあったけど、自分が先頭に立つには器不足だと思っていた佐川がサーガ日本國心理教だか何だかで日本を支配すると言っていた自信はどこから来るのかとずっと謎だったけど、それはBLACKBOXがあったからね!それで警察を抑え込み権力を支配するつもりだったんだ!納得。彩香ちゃん、いい仕事するわねー。今日は何かスッキリするわ♪」
「ありがとうございます。」
自分が解決して来た事件にもまだまだ知らない事実が隠れている事が分かった若菜。
「ホント、BLACK BOXの存在は厄介よね。これが日本を狂わせ、テロリスト達に希望を与えてしまう元凶になってる、か…。」
若菜は背筋を伸ばし気持ちを入れ替えた。