THE BLACK BOX-8
「あー!人をおちょくるって楽しいわぁー!」
スッキリした表情で背を伸ばす若菜。それが若菜の生きがいの一つだ。特に杉山とマギーをおちょくるのが1番楽しい。
「さてと、いよいよ肝心のBLACK BOXの方にとりかかろっか。」
若菜はスマホを手にする。
「あ、もしもしー、彩香ちゃーん?そろそろ来れる??」
「あ、はい。すぐに。」
生真面目な返事をした彩香はもう総監室の前にいた。
「失礼します。」
「早っ!さすが彩香ちゃん。」
彩香はマギーが居ると浮ついて何も手につかなくなるが、そうでなければ真面目で機敏な性格だ。だが思い立ったら行動したい衝動を抑えきれない面もあり、実際、以前地下倉庫に入り待ち伏せされ強姦されかけた事もある。だが以来、行動には少し慎重になったのは確かだ。
「まぁ座って?」
「失礼します。」
若菜と対面して座る。
「で、分かった?BLACK BOXについて頼んでおいた事。」
「はい、だいたいの流れは。」
「じゃあ報告して。」
「はい。まずBLACKBOXは代々警視総監の元、厳重に保管されてました。総監交代の時、必ず引き継ぎが行われ、総監以外の者の目に触れる事なく現在まで来てます。が、ある時BLACKBOXは持ち出され、警視庁本庁から外へと持ち出されたんです。」
「誰が?何の為に?」
「持ち出したのか加藤総監です。」
「えっ?まさか…」
「そのまさかです。ある理由で加藤総監はBLACKBOXを持ち出しただけではなく外部の人間の手に渡してしまったんです。」
「あの加藤総監が…?何故…?」
若菜は考え込む。
「それは…」
若菜はその理由を彩香から報告される前に気づきたかった。頭の中の脳細胞を叩き起こしフル稼働させる。
「待った!もしかして…外部の人間って…田口??」
彩香はそれに気付いた若菜に驚きを覚えた。
「そ、そうです。」
「理由は娘の綾美さん。田口は何かの理由でBLACKBOXを欲しがった。そうか…。田口が綾美さんを拉致したのはBLACKBOXを手に入れる為だったんだ!私は綾美さんが解放された時から、何か違和感を感じてたのよね。ただ単に警視総監の娘だから狙われたって見立ててたけど、実は違かった。田口の目的はBLACK BOXだったんだ。田口は警察を愚弄し徹底的に失墜させると公言していた。その為にBLACKBOXを手に入れ警察の隠蔽しつ来た数々の事実を明るみにして警察の信頼を跡形もなく崩そうとしたのね!なるほど、それなら綾美さんの突然の発見も腑に落ちるわ。」
長年胸に引っかかっていたモノの一つがようやく取れた。