THE BLACK BOX-7
「仮面夫婦とでも言うんスかねぇ。美琴はあの通り美人ですから、謙也はどこに言っても奥さんが美人だ美人だと褒められていつも高笑いしてたようです。見せびらかせるように連れて回る姿が印象に残っていた人らが多かったっスね。一方琴美は笑っているようで笑ってない…作り笑いを取り繕っていたようだと言う人が多かったし、謙也に強引に仲の良い姿を見せさせられている、そのように見えたと。俺が思うに謙也と琴美の間には初めから愛はなかったんじゃないかと。琴美自身、納得行かない結婚で、それは今でも同じなんじゃないかと思います。」
「そう…。」
「だからもしかして何か弱みを握られての結婚だった、とか。で、俺思うんですが、そこら辺に木田康介と坂下裕之の間でなされた秀美を巡る略奪婚のヒントがありませんか?何回か同じ様な匂いがするんですが。」
若菜がニコッと笑う。
「杉山君もだいぶ刑事の勘ってものが備わって来たみたいね。やっぱ年上の先輩であり恋人とのセックスが杉山君に眠る能力を覚醒させてるのね!」
「か、関係ないっしょ!?」
「まぁまぁ♪秀美と琴美は2人の男の間で同じ様な境遇にあったのかも知れない。杉山君と広徳の間で揺れた…」
「だー!もーその話はいいっすから!!」
「アハっ、悪かった、悪かったわよー、ごめん♪高嶋謙也が琴美を誰から奪ったのか…、もしそう言う存在の男が居たら、是非知りたいわよねぇ?」
「ですね。木田康介からの繋がりで言えば横芝関係ですかね?」
「やっぱ冴えてるわー、杉山君!」
またいじって来そうな若菜の目をジーッと見て、もう言うんじゃねーぞ、言うんじゃねーぞと言う念を送り牽制する。
「…もう揶揄わないってばぁ。」
可愛らしく口を尖らせ戯ける若菜。
「ンフッ、じゃあそこを調べてくれる?」
「分かりました。」
「それと、俺は別にプライベートに振り回されて人を判断するつもりはありませんから。広徳もフェアな目で見てますし、調べた中で広徳も美琴同様、プレイボーイではありますが真っ当に生きてる人間ですね。」
「そう。じゃあマギーを幸せにしてくれる人間として認められるの?」
「…。今のところは。プレイボーイ的なトコ以外は。」
「杉山君だってハーフ美女と年上美魔女を手玉にとったプレイボーイじゃない♪」
「そ、そんなんじゃねーし!!」
「アハっ、分かった分かった!じゃあくれぐれも気をつけて捜査に当たってね?まだ傷口が癒されてないようだから、身も心もオチンチンもっ♪」
「!?いーっすか!?包茎手術した事はみんなには内緒ですからねっ!!」
「ハイハイ♪」
「じゃっ!」
総監室を出た杉山。
(この世で一回だけ殺人が認められるなら、絶対上原若菜を殺ーす!!)
散々弄られて苛々する杉山。まるで姉に色々お節介を受けているような感覚でそう思ったのであった。