THE BLACK BOX-6
「で、肝心の高嶋美琴ですが、年商56億円の一流企業の社長ならまぁ少しぐらいは贅沢な事をしてると思いきや、仕事は積極的に店舗を周り、それこそ客1人1人と顔を合わせて接客するぐらい現場を大事にしてるようですね。実際俺が初めて行った時も向こうから話しかけて来ましたし、会員からはとても丁寧親切で親しみやすい人だともっぱらの評判です。店員からも同じ様な話が取れてます。でもそんな人間こそ裏で何をしてるか分からないってのは良くある事ですが、1週間張った感じだと、仕事の為に全てをささげる社長以外の印象は受けませんでした。会社をいつも22時に退社、車も軽自動車。夜飯はスーパーかコンビニ。外食は一切なし。ちなみに昼はいつも自分で作った弁当。朝は誰よりも早い7時半に出社。外出してもサボりなし。全く嫌になるぐらい真っ当に生きてる人にしか見えませんでした。1人息子の…息子の…広徳も、もう大学生だし手から離れ一人暮らし…」
「で、マギーと一緒にラブラブ中。」
「(くっ!人の腫れ物をグイグイ弄って来やがる…)…、夫の高嶋謙也とはもう5年前から完全別居中だから、悠々とまではいかないでしょうが、全てを会社に捧げる1人のライフスタイルを送ってるようです。一応リグレッドの経営状況、金の流れも調べましたが、特に怪しい点はありませんね。彼女は社長としてすべき事をして、会社を支えてるだけ、そう思います。」
「へー、随分と高嶋美琴の肩を持つじゃーん。もしかしてヤッちゃった?」
「!?す、する訳ないじゃないっスか!」
「そうよねー、元彼女の彼氏のママとなんか出来ないわよねー。」
「(し、締め殺してぇ…!!)…、出来ません。」
「ま、それはいいとして…」
「…(良くねーわ!散々傷口に塩塗りやがって!)」
「高嶋謙也と美琴の過去は何か分かった?結婚した経緯とか、結婚後の2人の関係とか。」
「まず広…徳ですが、間違いなく2人の子供ではある様です。どちらかの連れ子とか、養子とかではなく。結婚して一年後に広徳を産んでます。」
「そう。じゃあ2人の出会いとかなりそめは?」
「そこはまだ調べがついてませんが、少なくとも美琴の方は結婚生活に満足してるようには見えなかったと言う情報は得ました。」
若菜は興味ありげな顔で、「へー…」と口にした。