THE BLACK BOX-10
「田口徹は佐川健吾と言うパートナーがいて、佐川の頭脳や手助けを得て最後の最後まで警察を苦しめる事が出来たと言うのが見立てでしたよね?でも佐川にはパートナーがいなかった。田口がBLACK BOXを佐川に預けていた事は想像に容易いですが、ではパートナーのいない佐川はどうかと。恐らく自分でどこかに所持していたはず。BLACK BOXの行方はそこで分からなくなっているのが今の所の調べで確かなトコです。が、これは何の確証も得られていない事なんですが…」
若菜の目がキラッと光る。
「なぁに??」
「私、田口徹、佐川健吾の事件の資料を振り返って読んだんです。その中である疑問がありまして…」
「どんな疑問?」
「警視庁本庁は海老川優里の飛行機テロで崩壊しました。でも海老川優里はレイプ撲滅に尽力していた上原さんを好意的に捉えてましたし、そんな上原さんのいる警察も敵とは考えていなかったと見られてます。では何故海老川優里は警視庁本庁を狙ったのかと。海老川優里に警察を狙う理由が見当たりませんでした。」
「凄いわね、ソコ、突くんだ。私もそれは疑問だった。白川歩美からの口からも警察を恨んでる節の話はなかったし、レイプ犯罪に取り組む姿勢を評価してくれてた。佐川が消えても田口の残した麻薬やお金の捜査に忙しくて、何故彼女が警察を狙ったのかの追及が頭から抜けてたし、他にスカイツリーとか同時に飛行機テロがあったから、目ぼしいところを標的にしただけかと思い過ごした所もある。彩香ちゃんは警察を狙った理由は何だと思う?」
「それは…BLACK BOXだと思います。」
「BLACK BOX??て事はいつの間にか誰かがBLACK BOXを取り戻したって事?」
「そう考えてます。海老川優里の標的は佐川健吾。彼の暴挙による支配を防ぐ事。佐川の強みはBLACK BOXを持っている事。それを佐川が失えばもともと大した器ではありません。佐川の志を粉々に打ち砕き、BLACK BOXがなければお前なんか何もない人間だと思い知らせた後に命を奪ったんだと、そう私は考えます。海老川優里はBLACK BOXが警察に取り戻されてると言う情報を得ていて飛行機を本庁に突っ込ませBLACK BOXもろともこの世から消し去る計画だったんじゃないかと。」
「本庁に飛行機を突っ込ませたのは警察が標的ではなくBLACK BOXの破壊が目的だと?」
「はい。そう考えると上原さんの感じていた違和感もなくなるのでは?」
「確かに…。」
若菜はその考えは全くしていなかった事だった。確かにそう見立てると長年抱えていた疑問が解決できる。もしマギーに言われたのなら素直に認めなかっと思うが、不思議と彩香から言われると悔しくもなく素直に受け止められたのは彩香はあまり揶揄い甲斐がない人間だったからかも知れない。