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ヒジリ
【その他 官能小説】

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ヒジリ-6

『…はぁっ。』
あたしはそんな彼に呆れ、自ら言葉を発した。
『あたしから誘ったんだ。あたしに迫られて、こいつが断れる訳無いでしょ?』
そう笑顔を浮かべて言ったあたしに、時田は興味有り気な表情を浮かべた。
「確に。こんなの着けて誘われたら、俺も断らないね。」
そして床に落ちていたあたしの下着を手に取り、それを指でクルクルと回して見せた。
『クスっ、変なヤツ。』
「それはお互い様。同じクラスでハジケてるもん同士、仲良くしようや。じゃな!」
そして化学の課題らしき紙の束と下着をあたしに渡し、時田は部屋を後にした。


「…おっかねぇ奴。」
彼は時田の足跡が遠ざかると言った。
『あたしの事?あいつの事?』
「両方。」
『なるほど!じゃぁ、これっきりでね。』
「他の生徒にバレてる以上関係を持ち続ける訳にはいかないわな、仕方ない。」
まぁ、これが毎夜の事なのだからあたしにとっては普通の事だ。

「早坂!お前も時田みたいに少しアクセサリーでも付けてみたらどうだ?」
部屋を出る時、彼がそう言った。
『余計なお世話。あたし、金属アレルギーなんだよね。』
私はそう事実を告げ、彼の親しげな態度を一蹴にした。
こうしてあたしと彼のとても短い関係は終わった。
そう、男と直ぐに肌を重ねる事も、その関係が直ぐに終わる事も。全ては“声”の言うままに。


翌日、あたしは遅い登校をした。
周りは昼休み、と言っても食事の方は粗方済み、皆各々に自由な時間を過ごしていた。
だからあたしは教室には向かわず、里穂がいるであろういつもの場所へと向かった。
「おっ、聖おはよっ!」
『おはよ。』
予想通りの場所にいた里穂に、あたしは軽い挨拶を交した。
里穂は学校という場所で、あたしが一緒に過ごす女の子だ。
「今日はお客さんが来てるよ!」
そう言う里穂にあたしが興味の薄い視線を向けると、その陰から金に近い茶色に染められた髪が現れた。
「よっ!」
そう手を挙げて微笑むそいつの手にはいくつもの重そうな指輪がと煙草があった。
「セイ君だよ〜?」
里穂にそう呼ばれた奴は、昨夜あたしと化学教師との一時の関係を目撃した時田だった。
「こんなイイ喫煙所知ってんならもっと早く教えてよ〜!」
「え〜っ!?だってセイ君って何か怖そうなんだも〜ん!」
「俺が怖い〜?!里穂ちゃんの方が怖いし!」
「失礼な〜!」
そんなバカげた会話を繰り返す2人を、あたしは黙って見つめた。あたしと時田に会話は無い。
だが、そんな時間は里穂の一言に寄って終りをつげた。
「あっ。あたし次の現代文、もう日数ヤバイんだよね!」
そう言い残し、里穂はあたしと時田を残してこの場を去ってしまった。
『どれ、帰るか。』
里穂が授業に行ってしまえば、あたしがこの場にいる意味は無い。
時田を今日の標的に定めるなら話は別だが、あたしは時田のごちゃごちゃ着けたシルバーの装飾品を見ていると何やら寒気がする。
あたしの金属アレルギーはかなり重症。一度身に着ければ直ぐさま肌が炎症を起こし、体が銀製品に対する拒絶反応を示す。


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