ヒジリ-5
そう思いながら無言を通すと彼は無言を肯定と取ったのか、自分自身をあたしに付き立てた。
「結構使い込んでる割りには、……良い締め付けしてるよ…。」
荒い息を抑えた彼は無理矢理腰を押し進め、奥まで私を貫いた。
『先生、どお?』
「んっ、すげぇ良いよ。」
あたしは目一杯力を込め、これでもかと言わんばかりに彼を締め付けた。
そしてその締め付けに耐え切れなった彼は一気に腰を揺らし始めた。
『はぁっ、先生っ、イイよ!もっと早くっ、もっと奥までっ、もっと犯してっ!』
彼をわざと挑発するような声を上げ、あたしは与えられる快感を楽しんだ。
「はぁっ、あぁっ!キツっ…。」
吐息とあえぎをもらす彼は、あたしの望み通りに更に早く、更に奥まで犯した。
『んっ、先生っ。あたし、イキそっ。』
その言葉通り、あたしには絶頂が近付いていた。
激しい突き上げによって内壁を擦られ、吐息によって耳や首筋を刺激される。
「俺もっもうイキそうだっ…。」
彼がそう言うと同時にあたしは果て、全身に広がる強い痙攣と快感に翻弄され続けた。
そしていつもの様に意識が薄れ、体がその場に倒れ込むのを感じた。
そう、あたしはいつもこうだ。
男に抱かれ絶頂を迎えると、決まって意識が途切れる。まぁ途切れると言ってもものの数秒、初めてあの“声”を聞いた時の様にどうやって家に帰ったのか覚えていないなんて事は無くなった。
そして意識の薄れた時、必ず聞こえるのはあの“声”だった。
〈…今日も良い御馳走だった。これからも私の為に肢体を尽して貰おうか。〉
「おいっ、大丈夫か?!」
意識がはっきりとしだすと、彼の声が聞こえた。
『大丈夫、出す物出したんだし、もうスッキリしたよね?』
あたしの太股には、彼の吐き出した欲望が伝っていた。
「は?」
唖然とした顔であたしを見つめる彼は、あたしの言動を理解出来ていない。
『だから、もう十分でしょ?あたし帰るね。』
あたしは努めて冷たく言い放った。
そして乱された制服を整え始める。
その時だった…。
〈…コンコンッ!〉
この化学準備室のドアがノックされ、そのドアが中に居る人間の返答を待たずに開けられた。
「ちょっ、ちょっと待て!!」
彼はそう言ったが、それは既に手遅れ。
「今日期限の化学の課題、持ってきました〜。」
そう言って部屋に足を踏み入れたのは、同じクラスにいる時田という男だった。
「……あれ?もしかしてお取り込み中でした?」
時田はいかにも意地悪な笑顔を浮かべ、あたしと彼を見比べた。
そんな時田を見て彼は慌ててスラックスを整え、床に落ちたままだった白衣を拾い上げた。
一方、あたしは焦る事無く時田の顔を見つめ、ゆっくりと腕を組んだ。
明るく染められた髪、大胆に着崩した制服、そして全身に装着された重厚なシルバーのアクセサリー、教師を見下した様な口調、普段の行動を見ても彼も相当な問題児だろう。
「先生がこんな事していいんだ?」
彼よりも少し高い位置から見下だす様に話す時田は、彼にとっては十分過ぎる威圧を与えている様だ。
脅えきった彼は一言も言葉を発せず、黙り込んでしまった。