嫉妬少女1-1
朝が来た。
憂欝…。
学校に行きたくない。
学校が嫌なんじゃない。
満員電車が、いや。
なんだかよくわからないけど、わたしの顔は、萌え系ロリ顔らしい。
そんなわたしがお嬢様系女子校の清楚な制服を着ていると、たまらないらしい。
電車の中であいつがそう言っていた。
あいつはいつもかならずわたしの側にいる。
乗る場所を変えても、乗る時間を変えても、必ず。
顔は見たことがない。
わかるのは、声と息と…感触。
あいつはわたしの体を触り、何かを囁く。
気持ちが悪い。なのに…最近、濡れてしまうのだ。
「で?今朝もそいつに触られたんだ。」
「うん…。」
「冗談じゃない!!」
クラス委員の沙綾さんが、机を叩きながら叫んだ。
教室にいる数人の生徒がこちらをみたが、音の出所が沙綾さんからだと確認するとそれぞれの事にもどった。
「水穂さん、私が明日、一緒に電車に乗るわ!」
「えっ!」
「二人でいれば、絶対に痴漢は手を出せないわ。」
沙綾さんは、細身の太縁メガネをキリリと整えて立ち上がった。
翌朝、沙綾さんは待ち合わせどおり改札にあらわれた。
「おはよう、がんばりましょ。」
いつものとこに並んで、いつもの電車を待った。
電車が来て、わたしたちは手を繋いで乗り込んだ。
はずが…人波に押され、離れてしまった。
あっという間にぎゅうぎゅうになる。
かろうじて、数人向こうに沙綾さんが見えた。でも沙綾さんは私が見ていることに気付いていない。
…沙綾さんの顔をみて少し安心した。一人じゃないから心強い。
沙綾さんとは離れたけど、今日はあいつは私の側にいないようだ。警戒したに違いない。
ふと、沙綾さんの顔をみた。
様子がおかしい。
伏し目がちに困った顔をしている。
まさか。
あいつ、今日は沙綾さんに?
わたしが沙綾さんを連れてきたから…。
あいつが怒ったんだわ。
助けなきゃ。でも動けない。叫んだら沙綾さんがきっと恥ずかしい思いをする。
どうしよう…。
悩んでいるうちに、沙綾さんの表情が変化していく。
その表情は…気持ちよさそうな…恍惚としたものだった。
沙綾さんの白い頬は薄いピンクに染まり、なんともいえない…いやらしい顔をしている。