ツーリング動画を撮ろう♪-1
【ツーリング動画を撮ろう♪】
『ナナさん、魅了的なお尻してますね』
これはヨシリンの動画でよくある声かけだ。かけられた相手の恥ずかしがる反応を楽しむのだ。しかし、この日は相手が悪かった。
『嬉しい♪ヨシリンさん、あたしのお尻がお好みなんですか?』
それは気の効いた返しではなく、ナナは素のままに答えていた。
『えっ、は、はい、好きです』
予想外にグイグイくる反応に、ヨシリンは戸惑った。
『あたしもヨシリンさんのお尻が大好きです♪ヨシリンさんの動画で、ヨシリンさんのお尻ばかり観てますよ』
『あたしも観てまーす』
彩花も参戦した。
『そ、そうですか。だったらお尻のアングル、増やそうかな。あはは…』
『やったー♪』
咄嗟に変な対応をしてしまったが、動画配信者のヨシリンは、切り換えが早かった。
(今のは使える♪)
自分がオタオタし、彩花が喜びの声をあげる今のやり取りで、ヨシリンは跳ね上がる閲覧数を皮算用した。
『じゃあ、お尻好きのヨシリンさんに、サービスです』
ナナはステップに体重をかけて、浮かした尻を突き出すとプリプリと振った。
『じゃあ、あたしも♪ヨシリンさん、あたしのサービス、どうですか?』
ナナに倣った彩花も、タンデムステップに体重をかけて、突き出した尻をプリプリと振った。
(こ、これは…)
判断が難しかった。ウケることは間違いない。が、今の微かなお色気路線を超えてしまっていた。女性ファンが離れたり、下手したら炎上の可能性もあった。
(無難に編集でカットするべきね)
方針は決まった。それまでのやり取りで、掴みはOKと判断したヨシリンは、普通路線で話を進めることにした。
『いつも、3人で走ってるんですか?』
『いえ、今日が初めてなんですよ』
『えっ、じゃあ、ナナさんと亨さんは、どんな繋がりなんです?愛人とかじゃなくて実際のところは?』
『オレがナナちゃんの店に通ってたんですよ』
亨は女たちが敷いた路線に乗ることにした。
『お店って、バイクショップみたいな感じですか?』
『違います。お父さんが通ってたのはソープランドです。お父さんたら、パイパンのナナお姉さんに、はまっちゃって』
以心伝心。父親のフリを娘が回収した。
『ソ、ソープランド!パ、パイパン!』
ヨシリンの声が裏返った。
『だから、あたしもお母さんも、お父さんにおまんこして貰えるように、パイパンにしたんですよ』
彩花がど真ん中の直球を投げた。
『お、おま、おま!』
動画配信者として、辛うじて自主規制ができた。
(な、なに?どうなってんの?ま、まさか、聞き間違いよね。あんな可愛い口で、おま、おま…)
『おまんこですよ。ヨシリンさん、聞いてます?』
『へっ?あ、あたし?』
卑猥な単語が耳の奥で繰り返され、一瞬、自分がなにをしていたのかを失念してしまったのだ。