人気モトブロガー登場-1
【人気モトブロガー登場】
美形モトブロガーのヨシリンは、YouTubeの登録者数が100万を超えている。アップする動画は、毎回数十万単位の閲覧者を誇るバイク系ユーチューバーだ。
特に人気なのが【バイク女子のナンパシリーズ】。これぞと思うバイカーを見つけると、声をかけてツーリングに誘うのだが、初めはギクシャクしながらの会話が、ヨシリンの人柄と、時折、毒舌を交ぜた気兼ねない対応で、最後には友だちのような関係性になるという企画だった。閲覧者に男が多いので、必然的に声をかけるのは、バイク女子が多かった。
「格好いいバイクですね。ご家族でツーリングですか?」
「はい、まあ、そんな感じです…」
取り敢えず、家族ということにしてナナが応えた。
「今日はどちらまで行かれるですか」
「えーっと、この辺りの名勝を散策して、あとは予約してる温泉宿に泊まる予定です」
ヨシリンの問いに、視線の端で亨が小さく頷くのを確認したナナが答えた。
「あたし、ヨシリンていいます。YouTubeやってるんですけど、もし、よろしければ、一緒にツーリングしてるところ、動画に撮らせて貰えませんか。あっ、顔出しがダメなら、モザイク掛けますけど」
人懐っこい笑顔でヨシリンがナンパしてきた。
「亨さん、どうしよう?」
想定外のことなので、ナナは亨に対応を聞いた。
「あっ、ごめんなさい。勝手に奥さんとベラベラ喋って。えっと、亨さんでいいんですね。はじめまして。えっ?ご夫婦じゃないんですか?失礼しました。じゃあ、こちらは?あっ、お嬢さんでいいんですね。はい、彩花ちゃんね。可愛い。それと、綺麗なお姉さんは…」
「ナナです。うふふ、亨さんの愛人やってます」
様子見に、少しジャブを入れてみた。
「またまたぁ。愛人が娘さんとツーリングするなんて、あるわけないじゃないですか」
ヨシリンはニヤリと笑った。
「えへへ、お母さん公認の愛人さんなんですよ」
彩花も乗ってみた。
『ぷっ!彩花ったら』
智美が車内で吹いた。
「彩花ちゃん、可愛い顔して凄いこと言うのね」
直ぐにこんな返しをした彩花にヨシリンは驚いた。顔も可愛いし、これは久し振りに逸材に巡り会えたとゾクゾクもした。
(今のやり取りだけで、バズること間違いなしね)
できればモザイク無しでお願いしたいが、未成年のようなので判断が難しい。
「ヨシリンさんの動画、みんなで楽しく観てますよ」
タイミングを見て亨が言うと、ナナと彩花もうんうんと頷いた。
「ホントですか!ありがとうございます。こんな素敵なご家族、じゃなかったですね。えーっと、素敵な父娘と、素敵な愛人さん…、うふふ、そういうことにしますよ。いいですね。愛人のナナさんに観ていただいて光栄です。で、亨さん、どうでしょうか?ハーレー女子と、ダンディパパとタンデムする美少女。あたし、一目でメロメロになっちゃったんですよ」
ネタかどうかは不明だが、美形女子に弱いことを、よく動画の中でも言っていた。
『凄い!ナンパ慣れしてる』
美奈の驚きの声がインカムから聴こえた。
「いいですけど、ちょっと条件があります」
この時点で、まだ、どうなるかはわからない。しかし、動画配信するほどの女子なのだ。初めにハードに誘って見極めなくても、自分の意思で乱交を断れると判断した亨は、成り行きに任せて、話を続けることにした。
「どんな条件でしょう?」
ヨシリンは、ある程度なら条件を飲んでもいいと考えた。
(条件がLINE交換なら、願ったり叶ったりだけど)
このグループは、それほどの逸材だと思ったのだ。
「まだ、この先の展開でどうなるかわかりませんが、もしかしたら、ヨシリンさんのこの動画がお蔵入りになるかもしれないのです。そんなリスク付きで良ければツーリングに行きましょう」
「えっ?それはどういうことでしょうか?もしかして反社とか…」
「あはは、なわけないですよ。お父さんは別にして、あたしとナナお姉さんが反社の関係者に見えますか」
「うふふ、そうねぇ、亨さんは別にして、お二人は見えないかな(いいよ、彩花ちゃん)」
間髪入れない彩花の明るい返しに対して、苦笑いを浮かべる亨、それを見て楽しそうに笑うナナ。
(今日は当たりだ)
ヨシリンはニンマリした。