投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

無題
【その他 その他小説】

無題の最初へ 無題 2 無題 4 無題の最後へ

無題-3

帰ろう。
最後の時を、最高な場所で過ごしたい。


家では、娘が料理を作って待っていてくれた。

久しぶりの我が家。

一週間ちょっとしか経っていないのに。

まるで誰かの家に来たかのような違和感がある。


帰る場所があることを感じ、うれしく思った。



それから2か月は
家族で思い思いの時間を過ごした。


妻はわざわざ仕事を休み、一日を一緒にいてくれた。


娘は大学があったが、早く帰ってきてくれた。


みんなで
いつものように
夕飯を食べた。


どんな高級料理よりも


妻が作る料理には勝てなかった。

毎日毎日
食事をほおばり
なにも言わず、俺は黙って泣いた。不思議と溢れてきたんだ。


2人は無理に笑っていた。俺に分からないようにしたつもりかもしれないが、バレバレだ。
でも、そんな気遣いが、心地よかった。



時が流れるのが、こんなに遅いと感じたことはなかった。





三か月もしないうちに、俺は血を吐き再び担ぎ困れた。

苦しい。
苦しい。

喉をえぐってくれ!
肺を取り除いてくれ!
死を覚悟した。
泣きながら俺の名前を呼ぶ妻と娘に

俺は何も言わず、握られた手を握り返した。




俺は
意識を失った。
死ぬんだと、薄れゆく意識の中、そう思った。


無題の最初へ 無題 2 無題 4 無題の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前