秘密-1
「こんばんは、、お疲れ様です。」
いつもの、清楚な出立ちで麻由は現れた。だが、あの輪姦パーティーの日と同じような、少し「警戒」の色の強いコーデであった。
それでも細身のボディ・ラインが際立つ、見惚れてしまう美しさだ。
「やあ、、、掛けててよ・・・どう?お酒でも」
「そうですね、、いただきます」
意外にも麻由は断らなかった。実際、アルコールでもなければ話しづらい内容ではある。
啓介は、丸いテーブルの麻由の横に掛けた。
「はい、これお給料、、ご苦労さま。それと、、この間のことを謝らないと」
一瞬、麻由が固まる、、すぐには啓介の目を見ることをせずに、
「謝るって、、何をです?」
啓介も麻由を見ることも出来ず、答えることも出来ずにいた。
「それって、、やっぱりオーナーも私を、、、抱いたんですね?」
今度は啓介の目を見据えて、、問い詰めてくる。
「、、、ごめん」
「謝られても、、、」
そのときのことを思い出したのか、麻由は赤面して俯いたまま、、しばし時間が過ぎた。
「、、、どうしてわかったの?」
少し躊躇って、また顔を伏せながら話し始める。
「その、、、迫られたときの息遣いが、何となく橘さんのような気がして」
あのときか、、、喘ぐ麻由が、正気に戻ったようなリアクションをしたので覚えている。
テーブルに涙が落ちる。
「、、、ごめん・・・怒った?」
啓介の問いかけにしばらく答えがなかった。
「いえ、、怒ってはないけど、、、」
「ないけど、、なんだい?」
啓介は問い詰めた。
そして麻由は開き直ったかのように顔を上げ、
「恥ずかしくて、、、あんな姿を男の人に、というかオーナーに見られてしまって、、、」
笑顔を作りながらも目からは大粒の涙を溢す。
啓介は麻由との間隔を少し詰め、
「すごく綺麗だった」
「嘘、、、そんなはずない」
麻由は遂に手で顔を覆い泣き始めた。
「私は汚れた女です・・・」
「そこまで言うことはないよ。考えてもみなよ、君は『被害者』のようなもんだよ。あんな、お父さんと近い歳の連中に襲われて・・・・」
「お父さん、、、?」
その言葉に麻由は表情を固くして黙り込んだ。
「オーナーにとって、、私は娘みたいなものですか?」
唐突な質問だったが啓介は即答する、
「いや、違うよ」
幼馴染の娘ということもあり、確かに我々の関係はその表現が近いのだろうが・・・
「こんなこと言って、麻由ちゃんが気分を害すかもだが、、正直、娘でなく一人の女性、、、だ」
・・その言葉に、また麻由は泣き出した。
「ごめん、、、また傷つけたかも」
「いえ、そうじゃないんです」
麻由は顔を上げ、ニコリと笑い話し始めた。
「父のことなんですが」
つまりみさきの元旦那、か。
「離婚の原因までは聞いてませんよね?」
聞いたことがない。
一年前にひょっこりこの地元に帰ってきて、せいぜい会って話すのは週に一。二度。そこまでは聞いてなかった。
「私が原因なんです。悪いのは父なんですけど」
なんだか深い事情があるようだが、ここまで来たら聞かずにというわけにはいかないようだし、また麻由のほうも話したいようだ。
「この間、私の経験のことを聞いたでしょ?、、十六のときだったんです」
それは意外だ。
麻由なら処女でも不思議ではないと思っていたくらいなので。
年の離れた男と付き合ってたのだろうか、、、
「その相手が、お父さんなんです」
衝撃の告白だった。