羞恥-1
麻由との待ち合わせは、体裁上、地元ではなく現場ホテルの最寄り駅を選んだ。
見慣れぬ土地の駅改札での待ち合わせだったが、麻由は先に来ていた。
「待たせてごめん。麻由ちゃん、早いね」
ひと際輝く姿に、雑踏の中でもすぐに麻由を捜し当てる。
首元までしっかりボタンを留めたブラウス、気のせいかいつもより心持ち長めのスカート、そしてあまり記憶にない、麻由の細く綺麗な脚をまとうストッキング。
これら全て、今日の「輪姦パーティー」への警戒心の表れなのか、、、
普段からお洒落ではある麻由だが、とにかく今日は一段と人目をひくほどの美しさであった。
「なんだか、、あまり寝れなかったし今日も落ち着かなくて、、早く着いちゃいました」
それに、、、啓介には麻由自身が、一段と可愛らしく見えた。
啓介が、麻由を「娘」でなく、ひとりの女性として見ていることの表れであろう。
「無理ないよ。じゃ行こうか」
駅から十分足らずの場所にホテルはある。
今日は複数人での使用であり、ラブホではなくシティ・ホテルとした。
なかなか豪華な外観に、麻由は感嘆の声を漏らしながらも、ホテルに入ろうとするが、
「あ、あの、オーナーも入るんですか?」
それは、啓介自身もその場に居合せるのか、、という問いなのだろう。
「そうだけど?」
麻由は、これまでで最も動揺していた。
「え、、そ、そうだったんですか」
つまりは自分が輪姦されている場面を、啓介に晒すことになる、、、それを麻由は初めて知ることとなる。
「あの、、、オーナーは外していただくわけにはいかないでしょうか?」
はっきりと拒絶した。
しかし、啓介もここに来て引き下がれるわけもなく、
「じゃあ聞いてみるね。僕は帰るから任せていいか、ってね」
そう言って部屋に先乗りしている高尾に連絡を入れる。
ただし内容は、
「麻由がこう言っているので、NOと言う返信をよこせ」
と依頼、、、高尾からその通りの返信を受けた。
「麻由ちゃん、、すまないが、責任者不在は困るって」
受け取ったメールを麻由に見せる。
「、、、でも」
気まずい空気が流れた。
包み隠さず麻由の表情に現れる「嫌悪感」、歪めた眉の下でうっすらと涙が浮かんでいるようにも見える黒い瞳。
立ち止まったまま動かない麻由に、啓介は我に返る。
「あ、、、キャンセルしてもらうよ。待っててね、今・・・・」
「えっ、それは・・・」
麻由の制止で携帯を操作する手を止める。
「お金が、、、キャンセル料・・・私、払えません」
「いいよ、心配しなくて。何とかするから」
確かに高くついたが、、、これもよからぬことを企んだ罰だ。
半ば安堵したように啓介は、ホテルの高尾にその旨を伝えるため再び携帯を握る。
「、、、します」
「えっ?」
何か覚悟を決めたときの人間の目、、、顔を赤くしながら、しかし決して目を合わせてこようとしない。
「な、何か言った?麻由ちゃん?」
「私、、、しますから」
言葉少なに「続行」を望む旨を啓介に伝える。それは同時に「肌を晒すこと」、そして「啓介の前でセックスをすること」を了承するという意味であり、そんな調子で大丈夫なのかと心配になるほど、麻由の表情は硬かった。
しかし麻由は、、、どうやら本当に観念したみたいだった。