罪悪感-1
翌日も麻由は勤務だった。
閉店後の店内で先日同様二人きりだ。
向かい合わせに座る麻由に、啓介は後ろめたさをひた隠し説明を始めた。
「昨日の件だが、知り合いをあたり何とか見つかったよ。仕事の内容はキツいが日当で十万・・・」
麻由は期待と不安を隠さず現す。これも母親譲りで、割と言うべきことははっきり言う。
「どんなお仕事ですか?」
啓介は、、、勿体つけるように、
「麻由ちゃん、、嫌なら断ってくれていいけど、お母さんにはこの話は内緒にして欲しいんだ。それと、僕の
本意ではないということは理解して欲しい。あくまで麻由ちゃんが困っているから探してきた話だ」
麻由は、、、どちらかというと内容に対する不安より、早く話を聞かせて欲しい、という様子だ。
やはり、よほど切羽詰まっているのだろう。
「仕事」の内容を説明した。
平たく言えば「援助交際」、しかしその単語を使えば拒絶は大きかろうと思い、婉曲な表現で麻由には説明した。
相手は啓介の知人数名。中には母親を知る者もいる。
つまり「輪姦」形式だ。
麻由の様子は、、殊の外冷静に見えた。
真面目で清楚なイメージではあるが、そのあたりは今時の子か。
あるいはそれほどまでに背に腹かえられぬ状況なのか。
「オーナーから見て、、、私って、そんな風に映ってましたか?」
まずい、と思った。予想してた以上の拒絶だ。
リスクは承知の上ではあった。
母親に話す話さないは五分五分かそれほどの心配はない。麻由とて事情が事情で話せないだろう。
しかし当然、そうなると麻由は辞めてしまう。
リスクとはいえ、まあその程度だと言えばその程度だが、、、店としては喜ばしからぬ状況ではある。
「あ、いや、、気を悪くしたならごめん。条件に合うとしたらそんな話しかなくて、、倉田さんさえ
よければ、と思って。聞かなかったことにして」
しかしどうやら違うようで、
「あ、そうじゃないんです。純粋にどう見られてるのかな、と思って・・・」
これは脈ありと考えてよさそうだ。
「勿論、そんな子じゃないと思ってる。お母さんは長年の友人だ。そのお嬢さんにこんな話を、と思った
けど・・・繰り返すようだが、君が困ってるなら、と思っただけだよ」
我ながら偽善者だ。
少し考えたい、といい、その日は麻由は帰った。
もともと友人であるみさきの娘で、子がいない自分には我が娘のようなものだ。
その「娘同然」の子にこんな話を・・・啓介はまた胸が痛む。
麻由から「詳しく聞きたい」という連絡がきたのは、翌日の午前中だった。
その日勤務のない麻由と、近くの喫茶店で落ち合う。
知り合いの店で、、、ほかでもない、麻由を紹介した男のひとりだ。名を松井さんと言い、町内会の会長でもある。
待ち合わせより数分遅れて麻由は来た。
どうにも時間にはルーズなところがあるが、今日ばかりは足取りが軽いはずもなく、やむを得ないだろう。
麻由に説明を始めた。
まず相手は五人で、四万ずつ払うということ。
実際、せしめるのは五万ずつだが、残りはホテル代等の諸経費だ。
そして、、、プレイ内容はすべて「自由」で、NG事項は「中出し」のみ。従って麻由の「安全日」に行い、万一妊娠した場合は、堕胎費用は負担する、という内容だ。
そこは、四十代のおじさんばかり故心配は少ない、と気休めておいた。
かなり悩んでいるようではあったが、今日はあまり時間がない、もう少し考えて返事をすると言い、麻由は先に席を立った。
「どうよ?」
啓介は松井氏に麻由の感想を求めた。
「めちゃくちゃ可愛いな。大学生かい?あちこち小さいけど俺はモロ好みだな」
概ね麻由への印象を語る者たちと同じ感想だ。
隠し撮りしたビデオを見せて、希望者を募るよ、と松井氏は乗り気だ。
啓介は店をあとにした。
その日のうちに麻由から、了承の旨、連絡があった。
迷ったが、希望額の倍などという条件は絶対見つからないだろうし、今からキャンセルして友達に迷惑をかけたくない・・・等、自分を正当化する理由を麻由なりに並べているように思えたが・・・とにかく麻由は承知した。
すぐさま啓介は、松井氏に確認をとり、参加希望者の集まり具合を聞いてみる。
思いの外、希望者は多くどうしても六人、とねじ込まれた。
麻由にはもちろんこれで増額だから、と了解してもらい、決行の日もちょうど明後日が土曜でかつ麻由の身体上も都合がよく、即時決まった。
これで、あの子の裸が拝めるのか。
とても明後日まで待ち切れない。
幸いなのか生憎か、金曜も麻由は勤務はなく、次に会うのは当日、現地でとなる。