人気女優の試練と進化-5
「どうしたら…」
みんなが心配する中、肝腎な翔はマイペースだった。
(おとなしくなったな。そろそろ始めるか。てか、美奈ちゃん相手に、こっちも我満の限界だし)
翔は掴んでいた美奈の腕を離し、頬を伝う美奈の涙を指先で拭った。
(優しくしないで…)
頬を撫でる指先が暖かかった。美奈は目を閉じた。
(また、勘違いしちゃうから…)
閉じた瞼から涙が溢れそうになったが、美奈はそれを制御した。
翔の愛撫に対してマグロ状態になった美奈を見て、彩花は焦った。
(まさか、翔くんを嫌いになったんじゃ…)
大好きな翔にそんなことをされると、彩花は喜びで感情が抑えられなくなる。とてもマグロのままでは居られないからだ。
「み、美奈ちゃん!」
3人で愛し合う未来が見えなくなった彩花は、自分でも気づかずに声をかけていた。
その声を美奈は遠くに聞いていた。
(ん…彩花ちゃんか…居たんだ…)
そう言えば、見届けて欲しいと頼んでいた。
(どうしてそんなこと頼んだんだっけ?)
彩花と話したときのことを思い返した。喜んだ彩花の顔が脳裏に浮かんだ。
(可愛いかったなぁ…)
その彩花の笑顔に美奈の心が僅かに揺さぶられた。
(3人で愛し合うなんて、どうして信じたんだろう)
答えはわかっていた。彩花の本気が伝わったからだ。淫乱なのに純真無垢。希有な彩花の心を疑うことは、美奈にはできなかった。
また、涙が込み上げてきた。翔はその涙を優しく拭った。翔の指が触れた美奈の目尻がピクピクと反応を示した。それを見た彩花は希望を持った。
「翔くん、もう一度キスしてあげて」
(キスされても…)
ぼんやりと思う美奈の唇に翔のそれが重なった。
頑な美奈の唇が翔の舌を受け入れないことに、彩花は直ぐに気づいた。
「美奈ちゃん!!」
彩花の悲壮感が混ざる声色に、また、美奈の心が反応を示した。
(彩花ちゃん、どうしたの?)
辛そうな彩花の方に意識を傾けた。
「翔くんを感じて、お願い!」
(どうしたらいいの?)
答えは女体が知っていた。美奈は僅かに唇を開いた。
翔の舌が侵入してきた。甘い唾液が混ざり合い、美奈は既視感を覚えた。
自身も遠慮がちに舌を絡めた。翔はそれに応じて唾液を美奈の口に流した。自然とそれを啜った。気づけば貪るように翔の舌を吸い、知らず知らずの内に翔の背中に手を回していた。翔がそれに応えて、ぎゅうっと美奈を抱き締めてくれた。