美奈の隠した本心-3
じゃん拳のときは翔が勝つように念じ、そして、翔が勝ったときは心の中でガッツポーズをしていた。翔の射精を顔で受けたときは、気が遠くなりそうなほど興奮した。
当然、初めての相手は翔が良かったし、貫通するときは翔だけを感じたいと思っていた。一方で、彩花とも交わりたいと思っていたのも本心だ。
そして、翔と彩花を天秤にかけた結果、肉棒を持つ翔に性差で軍配が上がったのだ。それなのに、ラストを彩花に頼んだのは、そんな葛藤の結果だった。
表面上ではそんな素振り見せない美奈に、智美がそっと耳打ちをした。
「美奈ちゃん、そんなに悩まなくてもいいのよ」
思いもしなかった指摘に、美奈は驚いた。
「ど、どうして?」
自分は女優だ。心の中で幾ら悩んでいても、そんな素振りを見せない自信があった。それを少し接しただけで見抜いた智美を、美奈はまじまじと見詰めた。
そんな2人のやり取りを見ていた春奈が、翔と彩花に声をかけた。
「翔と彩花ちゃん、あたし、おしっこしたいから、付き合って。今度は川に向かってするから」
彩花にスマートフォンを、翔にティッシュを渡した。
「オヤジに頼めばいいだろ」
「いいよ。翔くん、行こ」
文句を言う翔を彩花が宥めて誘った。
「あっ、お父さんたちもナナさんもおいでよ。春奈お義母さんのソロ放尿だよ。見ないと損だよ」
ついでに残りの者たちにも、彩花は声をかけた。
美奈と智美を残し、みんながこの場から離れてから、智美が美奈ににっこり微笑みかけた。そんな智美の雰囲気に、美奈は改めて問いかけた。
「ど、どうして悩んでるってわかったんですか?」
「『どうして』って、見てたらわかるじゃない。女の勘よ。でも、ありがとう。彩花のことを気にしてくれて」
ここまで心の中を見透かされたことはなかった。
「えっ、でも…」
言葉が続かず、美奈は口ごもった。そんな美奈に、智美は更に直接的な言葉を口にした。
「うふふ、美奈ちゃんは翔くんが好きになったんでしょ」
「うっ…」
美奈は答える代わりに、女体を朱く染めた。
「いいんじゃない」
問題が無さそうに、智美がさらりと言った。
「で、でも…」
「それと彩花も可愛くて仕方がないんでしょ。それは翔くんへの思いと比べてどうなの?」
戸惑う美奈に智美が畳み掛けた。
「比べて…」
美奈は少し考えた。答は直ぐに出た。
「本当にお見通しなんですね。はい。彩花ちゃんも大好きです。LOVEの方です。あたし、彩花ちゃんに会うまで、自分がバイセクシャルだなんて気づきませんでした」
心の整理がついた美奈は正直に話した。
「うふふ、あたしもそうだった。あたしも春ちゃんが大好きなの。ね、だったら、ややこしいことは抜きにして、3人で愛し合えばいいじゃない」
それが肉体的ではなく、精神的な意味として言っていることは、智美の優しい目でわかった。淫乱なときとは別物の母性の籠った目だった。
「でも、あたしの翔くんへの気持ちを彩花ちゃんが知ったら…」
出会いの状況からして、自分はただセックスがしたいだけの女だと思われているはずだ。美奈は俯いた。
「大丈夫よ。彩花は見た目は幼く見えるけど、人としてはあたしたちの中で一番出来てるのよ。彩花には全部わかってる」
「全部って、まさか!」
美奈の目が丸くなった。
「だって、ダメダメなあたしでもわかるんだから、彩花には美奈ちゃんの気持ちなんて筒抜けね」
「つ、筒抜け…。じゃあ、わかってて、あたしの提案をあんなに喜んでたんですか?あんな演技、あたしにはできない…」
本当に喜んでいると思っていた。だから、心が傷んだのだ。そんな彩花の演技を、女優の自分が見抜けなかったことに、美奈は驚き、落ち込んだ。